家百マガジン

こんばんは。 あすなろ建築工房の関尾です。 先週は「カナメはうす」の完成見学会がありました。 土地探しからご一緒させて頂いたお家で、敷地の南側の隣地は山になっていて、自然がより身近に感じることが出来る敷地をご案内させてもらいました。この南側の山の緑を部屋の中へ取り込む計画とし、ダイニングに設けた１.５間幅の大開口窓は、緑化率100％の眺めとなりました。https://asunaro-studio.jp/l/m/c6srrvcfiHVjlW お越しいただいたお客様は皆様、玄関からダイニングに足を踏み入れると「ワ～、すてき～！」と声をあげられていらっしゃいました。「窓から見える景色って本当に大事だな」と改めて思わせるものでした。極端なことを言えば、景色さえよければ設計がヘタクソでもなんとなくい家に感じてしまうものです。(^^;「景色がよい敷地は七難隠す」とはよく言ったものです。（誰も言ってません。私が勝手に言ってます。(^^;） 土地探しの際にお客様にご案内する際には、私が先にこの土地に惚れてしまった経緯もありました。「この土地いいから、絶対にいいから」って説明してご購入頂きました。 実はこの山の手前の敷地との間には道路があり、近隣の高校の通学路にもなっています。そのため、朝夕は相当な人通りとなります。道路とは少々高低差があったので、この高低差を利用し、歩道からの目線を植栽とベンチで見えないように配慮し設計しました。 そして、左右の近隣からの目線を無くすために、敢えて南側に建物を配置し、この緑だけがダイニングから見えるように建物を配置しました。 狙った通りの窓の景色となりました。しっかりと敷地条件を読み込めた結果と心の底で自画自賛しております。(^^; 敷地調査の重要性を改めて感じることになりました。ということで、本日は「居心地の良い家にするために必要な敷地調査」の話をしたいと思います。 先日、私の師匠である鈴木アトリエの鈴木さんがご設計された住宅を拝見してきました。海が近い傾斜地にある住宅地で、海と富士山を眺めることが出来る敷地をお客様が求められ、そこにご設計された住宅でした。もともと１軒の家が建っていたところを３軒分の敷地に分割された分譲地で、真ん中の土地を選ばれたそうです。２階の窓からは南西方向に富士山が見えるので、その方向に書斎を設け、富士山を眺めることが出来る窓を設けたとのこと。 しかし「窓から見えるはずの富士山が見えなくなってしまった」と嘆いていらっしゃいました。西側の家が後から建ち始めたそうなのですが、南に寄せて建物を配置されてしまったとのこと。セオリー通りなら、北に寄せて建物を配置し、南側に庭を配置するものなのですが、なぜかお隣は南に寄せて北側に空地を設けていたそうです。なぜ北側に空地を設けたかというと、そこに物置を置く計画だからとのこと。着工はお隣が後だったのですが、新建材での家づくりのお家とあって、先に出来上がったそうです。 そしてそのお隣に西側には、小窓しかなく、富士山を眺める窓が無いそうです。どうやら設計者はその敷地から富士山が見えることを知らないままに設計したそうです。北側に配置したことで、隣の２軒の眺望も遮ってしまう結果に、、、。 設計する作業の際には、それなりの時間をかけて敷地を読み込みます。私が現地で見ている作業は下記となります。 「車の駐車はどこにするのが適切か」「敷地内の高低差はどの程度か」「アプローチするのに最適な位置は」「冬至の朝日が昇る位置と夕日の沈む位置」「冬至の南中時の太陽の位置」「夏至の朝日が昇る位置と夕日の沈む位置」「敷地内に再利用できる植栽や自然石などはあるか」「電柱は邪魔にならないか」「電線は邪魔にならないか」「街路灯の位置」「最終汚水桝はどこにあるか」「最終雨水桝はどこにあるか」「ガスの引込はどこにあるか」「水道の引込はどこにあるか」「お隣やお向かいの駐車の位置」「お隣やお向かいの玄関の位置」「お隣やお向かいのバルコニーの位置」「お隣やお向かいの居室の窓の位置」「抜けのよい方向や眺望のよい方向はどちらか」「居心地のよい場所は敷地内のどこか」「近隣で見たくないもの（ゴミ置き場など）はあるか」「夏と冬の卓越風はどこを流れるか」「どんな音（近隣、車、飛行機など）がするか」「どんな香り・臭いがするか」「ゴミ集積所はどこか」 周辺の状況をカメラや360度カメラで撮影し、太陽の動きがわかるアプリ（Sun Seeker）で太陽位置を確認します。https://asunaro-studio.jp/l/m/1qjLm8FvyTRCyM そして環境を肌で感じるために、その場に何もせずに数十分じっとしてみます。ご近所の方が玄関先に出ていらっしゃるようなことがあれば、積極的に声をかけます。ご近所の方って「お隣にはどんな家が建つのか」普段から気にしていますので、変化があるとさり気なくこちらのことを見張っていたりするものです。(^^) ご近所の方がいらっしゃれば、「この敷地の設計を頼まれている設計士です」と挨拶させてもらって、土地の状況などをヒアリングします。風のことや音のことなどは、やはり住んでいる方に聞くのが情報が確実です。 そんな感じでいろいろと土地の条件を拾い集めることから始まります。土地の情報とお住まいになるご家族のご要望を踏まえ、法的な制限の中で、住まい心地のよい家となるよう最適解を求めていくようにプログラミングしていくことになります。この土地情報の収集作業は設計するうえではとっても大事です。この収集作業無しにいい家を設計することは不可能です。 冒頭でお話した設計者は、この敷地の情報を読み込む作業が足りなかったようですね。せっかくの富士山を眺めることが出来る敷地なのに、もったいない話です。 ハウスメーカーや建売住宅の設計者は、敷地を見ないで設計する人も多いそうです。最近はグーグルマップで大体の情報を得ることが出来るので、それで設計してしまうそうです。敷地の目線や空気感、風の流れ、香りなどはその場に立ってみないと得ることは出来ない情報です。とっても大事な情報なのにそれを入手しないまま設計してしまうなんて私には考えられないことです。 でも日本の住宅の多くはこのように敷地条件を盛り込まないままに設計されている家がとても多いのです。だから近隣からの目線がきになって、カーテンを閉め切りになっているお家がとても多いのです。 一番気持ちの良い場所で、周辺からの目線を気にすることなく過ごせる家族の団らんの場があることって、大事なことと思います。外とつながりをもって、カーテンを開け放して過ごす場所が一か所だけでも確保したいものです。最初からカーテン閉め放しの家って、窮屈に感じてしまって、家の居心地が悪くなります。だから日曜日には家に居ないで、家族でショッピングセンターで過ごすのが当たり前の生活になってしまいます。 窓外との関係性をしっかりと配慮して設計できる設計者って本当に少ないと思います。街中でランニングをしていて思うことは「本当に窓外との繋がりを考えた家が少ない」ということです。 せっかくの夢のマイホームですから、カーテン締め切りの閉鎖的で窮屈な家ではなく、窓を開け放すことが出来る開放的な居心地のよいお家にして欲しいと切に願いします。 本日は「居心地の良い家にするために必要な敷地調査」のお話でした。（今日は文章短め！(^^;)

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