全国の工務店が集まり、「性能とデザイン、あなたの会社ではどちらを優先するか」という問いに正面から向き合った回です。つくり手たちの答えは一見バラバラに見えて、実は深いところで共鳴していました。工務店選びのパートナーを探している方にとって、判断材料になる本音の議論です。
- 性能とデザインの比率は工務店ごとに異なり、その差を知ってから選ぶことが重要
- 「性能100・デザイン0」も「50・50」も、それぞれに明確な理由がある
- つくり手全員の本音は「100・100」——両方やらなければ本来おかしい
- 性能はいずれ「当たり前」になる——だからこそ今、最高水準を選ぶべき
- 設計者に「性能とデザインの比率」を直接聞くことが、工務店選びの第一歩
目次
「性能とデザイン、比率をつけるなら?」という問いの意味

今回の講座では、全国から集まったつくり手たちに「性能とデザイン、あえて比率をつけるなら何対何か(100点満点で)」という問いが投げかけられました。単なる数字遊びではありません。工務店がどの価値観を軸に家づくりをしているかを可視化するための問いです。
答えは出演者によってバラバラでした。「性能寄り」もいれば、「デザインと性能を等分」と答えた人もいます。しかしその議論の奥に、工務店を選ぶ際に知っておくべき本質的な視点が詰まっていました。
「性能重視」を選んだつくり手の理由

大木さんは性能側に大きく比重を置いた数字を提示しました。その理由として語られたのが「社会的責任」という言葉です。
「工務店業界全体として話した時に、うちはやってないぜっていうのはもう社会的責任みたいなことになってしまっている。だから、やりたくなくてもやっている、ということでは全然なくて、体感させてもらってよいと分かっているから、それをちゃんと広めていかないといけないんだという気持ちがある」
個人の好みを超えて、業界全体の底上げに関与しているという意識が性能重視の姿勢に繋がっていることが伝わります。同時に「得意ではないけれど、だからこそやらなければいけない」という率直な言葉もありました。自社の弱点を正直に認めながら取り組む姿勢は、誠実なつくり手の証左と言えます。
「デザイン重視」から「性能重視」へ——願望としての比率

デザインを本来の軸に置く飯田さんからは、異なる角度の発言がありました。「本当は性能100・デザインゼロと書きたいくらい、性能に振っている」と語りつつ、こう続けています。
「家ってこれだけじゃないじゃん、という社会的な欲求が同じようにある。豊かに暮らすための仕掛け作りがもっと必要で、それを完全に無視して振り切っているから、自分としてはデザインの方に行きたいという願望の方が大きい」
性能を強化しようとしているつくり手がデザインを渇望し、デザイン寄りのつくり手が性能の必要性を痛感している——この「ねじれ」が、動画の議論を単純な二項対立で終わらせない理由です。飯田さんの「性能寄りの数字」は現状の姿勢を示しながらも、本来の願望はデザインにある、という逆転した文脈から生まれています。
「50対50」が示す両立の難しさ

吉田さんは性能とデザインをほぼ等分と位置づけています。動画では、吉田さんのモデルハウスを見た他のつくり手たちが「本当に衝撃を受けた」と語る場面がありました。
「無理しないという言い方をして、現場に優しいという言い方をしているけれど、そこが逃げではなく、めちゃくちゃ綺麗に収まっている。だから良いなと思ってみんなで感嘆していたんです」
「現場に優しい」とは、施工精度を落とすことなくデザインと性能を同時に成立させる工夫の言い換えです。デザインを優先した結果、構造的に必要な補強を省いてしまうような設計は、「分かってやる」のと「分からずにやる」のとでは全く異なる、という指摘も動画中でなされています。両立は理想ですが、それを実現するには双方への深い理解が前提になります。
全員の本音——「本当は100・100と書きたかった」

議論の終盤、つくり手たちは笑いながらも本音を明かしました。「みんな本当は100・100と書きたかったんだよね」という言葉が飛び出しています。
冗談めかした一言ですが、性能とデザインはトレードオフではなく、どちらも当然に高水準であるべきだという考えが出演者全員に共通しているという意味では、本質を突いています。
「構造が得意な人、断熱が得意な人、デザインが得意な人——それぞれ強みは違う。しかし『構造ができないんで』では話にならない」という厳しい言葉も動画では語られていました。最低限の性能は「得意か不得意か」で回避できるものではなく、「やるかやらないか」の話だという認識が共有されていたのです。
「性能は当たり前になる」——20年先を見据えた視点

動画でとくに印象的だったのが、大木さんが語った長期的な視点です。
「20年前から断熱・断熱と言い続けてきた。当時は浜松では必要ないと散々言われた。でも20年経って今はG2が良いとされる時代になった。この先20年経った時に、性能なんてもう当たり前だよね、という時代が来る。G2なんかクソくらえなんですよ。今の最高水準をやっておかないと、30年・50年・100年住み継ぐと言っているのに、その家の価値がなくなってしまう」
住宅性能の基準は時代とともに上がり続ける。現在の断熱等性能等級G2(UA値0.46相当)が「標準」と呼ばれるようになったように、10〜20年後にはG3水準が当たり前になる可能性があります。だからこそ今の最高水準を選んでおくことが、長く住み続ける家には求められるというわけです。単なる性能マニアの主張ではなく、30〜50年単位で家の価値を守るための現実的な判断として語られています。
「性能がもはや議論されないレベルの当たり前になってほしい」——それが業界全体への願いであり、その上でデザインが語られる家づくりが本来の姿だ、という結論に全員が頷いていました。
工務店選びに活かす——「比率を聞く」という判断軸

動画の最後に、司会者から視聴者へ向けて具体的なアドバイスが語られています。
全国の工務店が同じ考えを持っているわけではない。良し悪しは置いておいて、まず「その工務店がどう考えているか」を知った上で依頼するかどうかを判断することが大切だ、というメッセージです。
そのための実践として動画が提案するのは、目の前の設計者に「性能とデザイン、あなたの会社ではどちらを優先しますか」と直接聞いてみることです。
相手がどう答えるか、その内容と理由をどれだけ自分の言葉で語れるか——それがそのつくり手の価値観の深さを測る指標になります。工務店選びの軸は、数値や仕様の比較だけでなく、つくり手の思想を問う質問から始まるのです。
UA値・C値・耐震等級といった数値指標は比較の出発点として有効ですが、この動画が伝えているのはその手前にある問い——「そもそもどんな家づくりを目指しているか」——の確認です。数字を読む前に、その数字をどんな思想で追いかけているかを知ること。それが、長く後悔のない工務店選びにつながります。
よくある質問

Q. 性能重視の工務店に頼むと、デザインは諦めなければいけませんか?
動画ではこの点が直接議論されています。「分かってやるならそれなりの補強の仕方がある」という言葉があるように、性能とデザインの両立は知識と技術があれば可能です。問題は「知らずに」どちらかを削ることで、両方を理解した上でバランスを取るつくり手であれば、どちらかを完全に諦める必要はないと語られています。
Q. 「性能とデザインの比率を聞く」と、工務店に失礼ではないですか?
動画では、むしろこの質問を積極的に投げかけることが推奨されています。相手がどう答えるかがつくり手の考えの深さを知る手がかりになるからです。失礼どころか、パートナー選びにおける最初の対話として有効な問いかけです。
Q. 性能の基準(G2など)は今後変わりますか?
大木さんは「20年前に断熱を言い続けて、今それが当たり前になった。この先20年でG2が当たり前になり、さらにG3が標準になるかもしれない」と語っています。住宅性能の基準は引き上げられ続ける方向にあるため、現時点での最高水準を選んでおくことがリスクヘッジになる、という見立てです。
Q. 1社のつくり手が性能もデザインも全部できるのは難しいですか?
「構造が得意な人もいれば、断熱が得意な人もいれば、デザインが得意な人もいる。1人の会社に全部を求めるのも難しい面がある」と動画では語られています。解決策の一つとして、飯田さんの事例のようにチームとして役割を分担する体制が挙げられており、依頼先の社内体制を確認することも選び方の重要な視点です。
性能とデザインをめぐるつくり手たちの本音は、数字の表面だけでは伝わらないものです。より詳しく知りたい方はぜひ動画をご覧ください。
この講義の出演者
家づくり百貨には、プロのつくり手同士が「本当に信用できる」と数珠つなぎで紹介し合った全国68社の工務店・設計事務所が参加しています。記事で学んだことを、信頼できるつくり手との出会いにつなげてください。
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