住宅ローンの借入可能額は、一般的に年収の5〜7倍が銀行審査の上限の目安です。ただし「借りられる額」と「無理なく返せる額」はまったく別物で、実際には年収の4〜5倍以内に抑えることが家計の安全ラインとされています。
この記事では、年収別の借入可能額シミュレーションや返済負担率の考え方、審査で見られるポイントをまとめました。
- 住宅ローンの借入可能額の目安は年収の5〜7倍だが、これは「借りられる上限」であり返済の安全圏ではない
- 家計の安全を保つなら、年収の4〜5倍以内を借入額の上限として考えるのが現実的
- 返済負担率(返済比率)は手取り年収の20〜25%以内が理想の水準とされている
- 審査では年収だけでなく、雇用形態・他の借入・勤続年数・健康状態なども重要な要素になる
- ペアローンや収入合算を活用することで、借入上限額を増やす方法もある
目次
1. 住宅ローンの借入可能額は年収の5〜7倍が目安

「住宅ローンはいくら借りられるの?」という問いに対して、金融機関が審査で使う大まかな基準が年収の5〜7倍です。年収500万円なら2,500万〜3,500万円、年収700万円なら3,500万〜4,900万円が審査上の上限感として語られます。
ただしこの倍率は、金融機関が「貸してもいい」と判断する上限に過ぎません。ライフプランや家計の余裕とは切り離して考える必要があり、FPたちが「審査が通った額=安心して借りられる額ではない」と繰り返し指摘するのもそのためです。
1-1. なぜ5〜7倍という数字が使われるのか
この目安は、返済期間35年・金利1〜2%台を前提に、月々の返済額が収入の30〜35%以内に収まる借入額を逆算したものです。かつては年収の5倍が一般的でしたが、超低金利が続いた2010年代以降は6〜7倍まで借りる人が増えました。
2024〜2025年現在は金利上昇局面に入っており、変動金利型で借りている人を中心に返済額増加のリスクが現実味を帯びています。かつてより慎重な倍率設定が求められる時期です。
1-2. 年収の「額面」と「手取り」で計算が変わる
金融機関の審査は額面年収(税込み年収)をベースに行われます。一方、実際に家計で使えるのは手取り(額面の75〜80%程度)です。審査で通る上限額を手取りベースで見直すと、実質的な借入余力は見た目より15〜20%ほど小さくなります。「年収600万円で最大4,200万円借りられる」と聞いても、手取りで返していく重みは数字以上のものがあります。
2. 「借りられる額」と「無理なく返せる額」は違う

「年収700万円で5,600万円の借入は無謀」という声がSNSや動画でよく取り上げられます。審査上は通ることもある金額ですが、返済比率が30%を超えた状態で子育て・老後資金・住宅の維持費まで賄おうとすると家計が行き詰まるケースが多く、こうした警告が繰り返されます。
2-1. 「借りられる上限」で買うと何が起きるか
審査の上限まで借りてしまうと、複数のリスクが重なりやすくなります。金利が上昇すれば月々の返済額が増えて生活費を圧迫し、固定資産税・修繕費・管理費などの維持コストが想定以上にかさむこともあります。カーローンや教育費との二重負担に加え、育休・転職・病気といった一時的な収入減があれば即座に資金繰りが苦しくなるリスクもあります。
2-2. 現実的な「返せる額」の考え方
FPの多くが勧めるのは、手取り月収から生活費・教育費・老後積立を差し引いた残りで返済できる金額を出発点にするやり方です。「年収×倍率」で予算を決めるより手間はかかりますが、10年後・20年後の家計を守るうえで欠かせない作業です。
3. 返済負担率(返済比率)の仕組みと理想の水準

返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合です。住宅ローン審査では多くの金融機関が返済負担率30〜35%以内を上限基準に設けています。
3-1. 金融機関が定める審査基準
代表的な金融機関の審査上限は以下のとおりです(2024〜2025年時点の一般的な水準)。
| 年収帯 | 審査上の返済負担率上限 |
|---|---|
| 〜400万円未満 | 30%以内 |
| 400万円以上 | 35%以内 |
フラット35では年収400万円未満で30%、400万円以上で35%と明記されており、業界の基準として広く参照されています。
3-2. 理想の返済負担率は手取りの20〜25%
審査基準の35%はあくまで「借りられる上限」です。実生活での安全ラインは手取り年収の20〜25%以内が理想で、額面年収ベースに換算すると概ね15〜20%に相当します。
手取り月収30万円の家庭であれば、月々の返済額は6万〜7.5万円以内が目安です。これを超えると、生活費・貯蓄・教育費とのバランスが崩れやすくなります。
4. 【年収別早見表】借入可能額と月々返済額のシミュレーション

下の表は、借入期間35年・金利1.8%(変動金利の現在の一般的な水準)での試算です。「審査上の上限」と「無理なく返せる目安額」を並べています。
| 年収 | 審査上の借入上限(年収×7倍) | 無理なく返せる目安(年収×4.5倍) | 目安額の月々返済 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 約2,100万円 | 約1,350万円 | 約4.4万円 |
| 400万円 | 約2,800万円 | 約1,800万円 | 約5.8万円 |
| 500万円 | 約3,500万円 | 約2,250万円 | 約7.3万円 |
| 600万円 | 約4,200万円 | 約2,700万円 | 約8.7万円 |
| 700万円 | 約4,900万円 | 約3,150万円 | 約10.2万円 |
| 900万円 | 約6,300万円 | 約4,050万円 | 約13.1万円 |
| 1,000万円 | 約7,000万円 | 約4,500万円 | 約14.5万円 |
※月々返済額は元利均等返済・金利1.8%・35年での概算です。ボーナス返済なし想定。
4-1. 年収300万円の場合
審査上限は約2,100万円ですが、手取りベースで安心して返せる額は1,350万円前後が現実的です。月々4万〜5万円の返済が生活を圧迫しないラインとなるため、頭金を厚く用意するか物件価格を抑えることが重要になります。
4-2. 年収400万円の場合
多くのFP解説で「ギリギリ無理なく一般的な住宅が買えるライン」と位置づけられる年収帯です。借入額1,800万〜2,000万円を目標に、頭金と住宅ローン控除を組み合わせるのが定石です。
4-3. 年収600万円の場合
借入上限は4,200万円に達しますが、子どもの教育費や老後資産を考えると2,700万〜3,000万円前後が無理のない水準です。この年収帯からペアローンや収入合算で予算を上積みするケースも増えてきます。
4-4. 年収700万円の場合
「年収700万円で5,600万円のローンは無謀」と言われる背景には、月々の返済が18万円前後になり、管理費・修繕積立金・固定資産税を加えると手取りの40%超に達するケースがあることです。年収700万円の安全な借入額は3,000万〜3,500万円前後が目安です。
5. 借入可能額を左右する5つの審査要素

住宅ローンの借入可能額は年収だけで決まりません。審査では総合的な信用力が評価されるため、年収が同じでも結果が大きく変わることがあります。
5-1. 雇用形態・勤続年数
正社員・公務員は評価が高く、契約社員・派遣社員・自営業者は慎重に審査される傾向があります。勤続年数は「2〜3年以上」が一つの目安で、転職直後は審査が通りにくい場合があります。
5-2. 他の借入・カードローン残高
カーローンや奨学金、カードローンの残高は、返済負担率の計算に合算されます。月々3万円のカーローン返済があれば、その分だけ住宅ローンで借りられる額が減ります。
5-3. 信用情報(クレジットヒストリー)
クレジットカードや携帯料金の支払い遅延は、信用情報機関(CIC・JICC)に記録されます。5年以内に延滞履歴がある場合、審査で否決されるリスクがあります。
5-4. 健康状態・団体信用生命保険(団信)
住宅ローンを借りる際は原則として団信への加入が必要です。持病や既往症によっては通常の団信に加入できず、ワイド団信(保険料が割高)での対応か、フラット35の団信任意型を選ぶことになります。
5-5. 物件の担保評価
物件の担保価値も審査対象です。中古は新築より担保評価が低くなりやすく、エリアや建物の状態によっては希望額を全額融資してもらえない場合があります。
6. 住宅ローン借入額を決めるときの注意点

借入額を決める際には、金額そのものだけでなく、将来のライフイベントや市場の変化も視野に入れる必要があります。
6-1. 変動金利のリスクを折り込む
2024〜2025年は日本銀行が利上げに動いており、変動金利型の住宅ローンを選んでいる人にとって返済額の増加は現実的なリスクです。「今の金利で計算した返済額に余裕がある」だけで判断するのは危険で、金利が1〜2%上がったシナリオでも返済できるかをあらかじめ確認しておく必要があります。
6-2. 諸費用・維持費を忘れない
住宅購入には物件価格以外に、仲介手数料・登記費用・ローン手数料・火災保険などで物件価格の3〜7%程度の諸費用がかかります。入居後も固定資産税(年10〜30万円程度)・修繕費・管理費が継続的に発生するため、これらを頭金や手元資金でまかなえる計画を立てておくことが大切です。
6-3. ライフイベントの変化を考慮する
子どもの誕生・教育費のピーク・親の介護・定年退職など、今後のライフイベントを書き出し、「その時期に月々いくら返済できるか」を時系列で整理しておくと安心です。返済期間中に収入が落ちる時期がある場合は、繰り上げ返済の計画を立てるか、借入額を保守的に設定しておく必要があります。
7. 借入上限額を増やす方法

「希望の物件に予算が届かない」という場合、いくつかの方法で実質的な借入可能額を広げられることがあります。
7-1. ペアローン・収入合算
夫婦や親子がそれぞれ住宅ローンを組む「ペアローン」や、配偶者の収入を合算して審査を受ける「収入合算」を使うと、世帯全体の借入可能額が広がります。年収400万円の夫と年収300万円の妻であれば、合算年収700万円ベースで審査を受けられます。ただし、片方が離職・産休に入ると返済が苦しくなるリスクも伴います。
7-2. 頭金を増やして借入額を減らす
頭金を厚く用意することで借入額を圧縮し、審査通過の確率を上げる方法です。物件価格の20%以上を頭金として用意できると、優遇金利が適用されやすくなる金融機関もあります。
7-3. 他の借入を完済してから申し込む
カーローンやカードローンを事前に完済しておくと、返済負担率の計算から除外され、住宅ローンで借りられる額が増えます。住宅購入の1〜2年前から計画的に借入を整理しておくと効果的です。
7-4. 住宅ローン控除(減税)の活用
住宅ローン控除は、年末ローン残高の0.7%が所得税・住民税から控除される制度です。借入額が大きいほど控除額も大きくなりますが、恩恵を最大化するには所得税の納税額が一定以上必要である点にも注意が必要です。
8. よくある質問(Q&A)
住宅ローンの借入可能額は年収の何倍が目安ですか?
審査上の上限は年収の5〜7倍が目安です。ただしこれは「借りられる上限」であり、無理なく返せる額としては年収の4〜5倍以内が推奨されています。
年収300万円で住宅ローンはいくら借りられますか?
審査上の上限は約1,500万〜2,100万円程度ですが、生活費や将来の出費を考えると現実的に返せる額は1,000万〜1,350万円前後です。頭金を多めに用意して月々の返済負担を下げることが重要です。
年収400万円で借りられる住宅ローンの借入可能額は?
審査上限は約2,000万〜2,800万円で、FPが現実的な目安として示すことが多いのは1,800万〜2,000万円前後です。住宅ローン控除と頭金の活用を組み合わせて計画するのがポイントです。
年収600万円で住宅ローンの借入可能額はいくらですか?
審査上の上限は約3,000万〜4,200万円です。ただし家族構成や教育費・老後費用を加味すると、2,700万〜3,000万円前後が生活を圧迫しない現実的なラインです。
世帯年収700万円の住宅ローンの借入可能額はいくらですか?
審査上限は3,500万〜4,900万円程度ですが、安心して返せる額は3,000万〜3,500万円前後が目安です。「5,600万円借りると無謀」と言われるのは、月々の返済が手取りの40%を超えてしまうためです。
年収3,000万円で住宅ローンの借入可能額はいくらですか?
審査上の上限は1億5,000万〜2億円以上になりますが、この年収帯では返済能力よりも所得税の最高税率(45%)が家計に与える影響や、資産全体の運用・流動性の観点から借入額を検討することが多いです。FPや税理士への相談が有効です。
住宅ローンの返済負担率の理想はどれくらいですか?
金融機関の審査基準は年収の30〜35%以内ですが、実生活での理想は手取り年収の20〜25%以内です。額面年収ベースでは15〜20%程度に収まると、生活費・貯蓄・教育費とのバランスが取りやすくなります。
まとめ

住宅ローンの借入可能額は年収の5〜7倍が審査の目安ですが、「借りられる額」と「安心して返せる額」は大きく異なります。年収の4〜5倍以内・返済負担率は手取りの20〜25%以内を基準に、金利上昇リスクや維持費・ライフイベントを織り込んだ計画を立てることが、長期的に安心できるマイホーム購入の第一歩です。
審査の倍率だけで予算を決めるのではなく、10年後・20年後の家計を具体的にシミュレーションしたうえで、自分にとっての「適正な借入額」を見極めてください。
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