「気になる工務店があるけれど、建築予定地から遠い。設計だけでもお願いできないだろうか」。動画や施工事例を見て工務店を探していると、そんな悩みが出てくるかもしれません。
家百講座・戸建て編の第29回では、工務店経営者4人が、遠方から設計を依頼されたときの判断を語りました。積極的に受ける人もいれば、原則として断る人もいます。しかし、その違いは単に仕事を増やしたいかどうかではありません。設計、施工、そして完成後の家守りに、どのように責任を持つかという考え方の違いです。
遠方の工務店を選ぶときは、依頼を受けてくれるかだけでなく、誰が建て、誰がその後の暮らしを支えるのかまで確かめることが大切です。
目次
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- 遠方の設計依頼を受けるかどうかは、工務店によって異なる。断る判断にも、建てた後まで責任を持ちたいという理由がある。
- 遠方の設計が成り立つかを考えるうえでは、現地の施工会社との信頼関係や、工事中・完成後の対応が重要になる。
- デザインの好みだけでなく、その地域の気候への理解、設計と施工の連携、費用まで含めて相談する。
- 受ける工務店と断る工務店のどちらが正解という話ではない。判断の理由を聞き、自分の家づくりに合うかを見極める。
1 近くの工務店を勧める理由は完成後まで続く家守り
講座で最初に語られたのは、まずは近くの工務店を探した方がよいという考え方でした。
その理由は、工務店の仕事を建物の完成までで区切っていないからです。設計と施工だけでなく、その後のことも含めて自分たちの仕事と考えるなら、設計だけを切り離すことで、本来果たしたい役割を果たせなくなる可能性があります。
遠方からの依頼を断られると、残念に感じるかもしれません。ただ、それが必ずしも消極的な対応とは限りません。自分たちが責任を持てる仕事の範囲を大切にしている、と受け止められる場合もあります。
相談するときは、対応できる地域を聞くだけでなく、なぜその範囲にしているのかまで尋ねてみてください。工務店が大切にしていることが見えやすくなります。
2 遠方の設計を支えるのは現地の工務店との関係
一方で、遠方の設計を前向きに受ける考え方も紹介されました。
異なる地域の気候風土を読み取り、その土地の工務店と話し合いながら、自分たちの設計をどう形にしていくかを考える。その経験には、設計の幅を広げる面白さがあると語られています。
ただし、図面を描いて渡せば完了するという話ではありません。講座では、工務店同士や人としての信頼関係、図面を残すこと、家守りを担う責任が話題になりました。遠方でも家づくりを支えられると考える背景には、現地で施工を担う仲間との関係があります。
建て主としては、設計を依頼したい会社だけを見るのではなく、実際に施工する会社も含めて相談することが重要です。設計者と施工者が普段からどのようにやり取りしているのか。工事中の変更や完成後の相談は、誰が窓口になるのか。こうした点を確認してから判断したいところです。
3 受ける場合にも現場管理と気候への条件がある
工事中に見えてくることへ対応できるか
基本的には遠方の依頼を断りつつ、知り合いの工務店と話がまとまれば検討できる、という意見もありました。
慎重になる理由の一つが、現場の管理です。工事が進む中で変わる部分や、当初は見えていなかったことが出てきたとき、遠方では対応しづらい面があります。それは、完成後のアフターフォローともつながる問題です。
設計と施工を分けるなら、現場で確認が必要になったときの連絡方法や判断の進め方まで、あらかじめ相談しておくとよいでしょう。
建築予定地の気候を理解しているか
講座では、知り合いの工務店がいることに加えて、自分に設計経験がある気候の地域かどうかを判断材料にする話もありました。
特に印象的なのは、断熱性能が高ければ、経験のない積雪地域でも問題なく設計できるとは考えていない、という姿勢です。地域への対応は、性能の数値だけで決まるものではありません。
気に入った施工事例があっても、それが自分の建築予定地と同じ条件で成り立つとは限りません。その地域での設計経験や、現地の施工会社と補い合える範囲を確認することが大切です。
4 設計の魅力と施工の相性は切り離せない
遠方の工務店に相談する理由として、その会社ならではの設計に魅力を感じていることがあるでしょう。しかし、講座では、設計と施工のつながりを崩してまで同じ価値を提供できるのか、という慎重な意見も出ました。
普段のつくり方と設計が深く結び付いている場合、別の施工会社で同じように実現できるとは限りません。思い描いた家づくりが成り立たなければ、かえって建て主に迷惑をかけるのではないか。この懸念も、依頼を断る理由になっています。
一方で、工務店同士が施工の方法を学び合い、連携によって互いの仕事がよくなったという経験も語られました。遠方の設計に可能性があるのは、会社同士が名前を知っているからだけでなく、現場で学び合うような関係を築いている場合です。
写真で見た雰囲気を再現できるかだけでなく、その設計をどのような施工体制で実現するのかを聞いてみましょう。
5 遠方の工務店に相談する前に整理したいこと
講座の議論を踏まえると、相談前には次の点を整理しておくと話が進めやすくなります。
- その工務店に頼みたい理由
どの施工事例の、どの部分に魅力を感じたのか。近くの工務店との比較も含め、自分の希望を言葉にしてみましょう。 - 現地で施工する会社と連携の方法
誰が施工を担い、設計内容や工事中の変更をどう共有するのかを確認します。 - 完成後の相談先
家守りやアフターフォローを誰が担うのか、相談の窓口を確認します。 - 地域への対応経験
建築予定地の気候や積雪などに対して、どのような経験と体制があるかを尋ねます。 - 設計と施工を分けた場合の費用
講座でも、設計費が別途必要になることを踏まえて判断してもらう、という話がありました。必要な費用と依頼範囲を確認し、自分にとってその設計に価値があるかを考えましょう。
よくある質問
遠方の工務店に設計だけをお願いできますか
会社によって異なります。前向きに受ける会社、条件が整えば検討する会社、原則として断る会社があります。施工体制や家守りについての考え方も合わせて聞くことが大切です。
断られたら、その工務店は対応が悪いのでしょうか
断るという結果だけでは判断できません。講座では、完成後まで自分たちで責任を持ちたい、設計と施工を切り離すと普段の家づくりが成立しにくい、といった理由が語られています。まずは理由を確認してみましょう。
地元の工務店を紹介されたら、そのまま決めても大丈夫ですか
講座では、近くで知っている会社の情報は伝えても、実際に話を聞き、判断するのは建て主自身だという姿勢も示されました。紹介の有無だけで決めず、自分の希望や予算、家づくりの考え方が合うかを確認しましょう。
まとめ 受けるか断るかよりも責任の持ち方を見る
遠方からの設計依頼を受ける工務店と、受けない工務店。今回の講座では意見が分かれましたが、どちらの立場にも、責任を持って家づくりに関わりたいという思いがありました。
大切なのは、遠くても依頼できるという一点で決めないことです。設計の魅力に加え、施工する人、現場での連携、地域への理解、完成後の相談先まで確かめる。そのうえで、自分が納得できる工務店を選んでいきましょう。
元の動画を見る
動画では、受ける側と断る側、それぞれの考え方や現場での経験を詳しく聞くことができます。
出演工務店は、扇建築工房、COMODO建築工房、樹々匠建設、フルマークハウスです。
この講義の出演者
飯田 亮(株式会社COMODO建築工房/COMODO建築設計室 栃木県宇都宮市)
木造新築住宅/戸建てリノベーション/マンションリノベーションを手がける。家づくり百貨 加盟工務店。
▶ 公式ホームページ
家づくり百貨には、プロのつくり手同士が「本当に信用できる」と数珠つなぎで紹介し合った全国68社の工務店・設計事務所が参加しています。記事で学んだことを、信頼できるつくり手との出会いにつなげてください。
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