奥村昭雄(おくむら・あきお)は、建築と家具の設計に取り組み、空気集熱式のOMソーラーを考案した建築家です。吉村順三の設計事務所で働いた経歴を持ち、東京藝術大学での教育を通じて、丸谷博男や伊礼智へとつながる住宅建築の流れにも位置しています。
間取りが同じでも、椅子の座り心地や冬の窓辺の暖かさが変われば、暮らしの感じ方は変わります。奥村の仕事は、建物の形だけでなく、身体が触れる家具や、目に見えない熱と空気まで含めて住まいを考える入口になります。

- 吉村順三設計事務所で実務を経験し、東京藝術大学で教育に携わった建築家。
- 住宅や施設の設計に加え、奥村まこととの協働で家具づくりにも取り組んだ。
- 太陽熱を空気で利用するOMソーラーの考案で知られるが、仕事は設備の分野に限られない。
目次
奥村昭雄とは?吉村順三の事務所と東京藝術大学
奥村昭雄(1928〜2012)は、吉村順三設計事務所で働き、その後、1964年に東京藝術大学の助教授、1973年に教授となっています。入所年については、奥村(びお)ソーラーの略歴が1956年、木曽アルテック社の略歴が1958年と記しているため、本記事では断定しません。事務所に所属した関係そのものは、両資料で確認できます。出典:奥村(びお)ソーラー「奥村昭雄」略歴、木曽アルテック社「AKIO OKUMURA」。
吉村との関係は、設計事務所で働いたという具体的な経歴があります。一方、レーモンドとの関係をこの相関図でたどるときは、レーモンド、吉村、奥村の順になります。奥村をレーモンド事務所の直接の所員として扱っているわけではありません。
吉村の仕事については吉村順三の建築思想と代表作、その前の世代についてはアントニン・レーモンドの住宅建築を読むと、つながりを確かめられます。
住宅から施設へ、奥村昭雄の建築作品
木曽アルテック社の公式略歴には、奥村の作品として「益守邸」(1968年)や「山内山荘」(1974年)、「金山中学校」(1992年)が挙げられています。金山町立金山中学校については、『新建築』1993年11月号が奥村昭雄・益子義弘の共同設計として紹介しています。出典:木曽アルテック社「AKIO OKUMURA」、『新建築』1993年11月号の掲載作品一覧。
同じ作品一覧には、1972年の「木曽板倉」や、永田昌民との共同設計である1995年の「関西学研都市展示館」もあります。個人住宅、地域の建物、展示施設と対象を広げて見ると、OMソーラーだけでは語れない設計活動の幅が分かります。設計者の一覧に共同設計の相手が記されている作品は、その相手まで含めて紹介する必要があります。
なお、奥村の作品であることだけを理由に、すべての建物にOMソーラーが採用されたと考えることはできません。作品の年代、設計者、採用された仕組みは、建物ごとに確認する情報です。建築家の経歴と個々の住宅の仕様を分けると、調べた事実を正確に整理できます。
家具の仕事から見る、手に触れる暮らし

奥村夫妻による家具の仕事は、木曽三岳奥村設計所を前身とするKAJARTの公式沿革から確認できます。1978年に奥村昭雄・まこと夫妻が三岳木工所を設立し、その後、奥村設計所と合併しています。同社の記録には、1979年以降の家具展も掲載されています。出典:KAJART「About us」。
家具から住宅を考えると、図面の尺度が暮らしに近づきます。椅子の高さに合わせた机、座った場所から見える窓、手を伸ばして使える棚。家具一つの条件が、部屋の使い方に結びつきます。
家づくりで実践するなら、現在使っている家具と、新居でも使いたい家具を早めに整理するとよいでしょう。幅や奥行きに加えて、どの時間帯に誰が使うかを設計者に伝えると、配置の相談が進みます。この提案は、奥村の家具と建築の両方に及ぶ仕事から考えた、本記事の家づくりへの読み取りです。
家具と木への関心は、著書からもたどれる
奥村には『奥村昭雄のディテール』『暖炉づくりのハンドブック』『木の家具作り』『樹から生まれる家具』などの著書があります。木曽アルテック社の略歴に書名と刊行年が掲載されています。建築の細部、火のある暮らし、木の扱いへと関心が及んでいたことを、著作の題材からも確かめられます。出典:木曽アルテック社「AKIO OKUMURA」著書一覧。
作品写真では、椅子は部屋の中の小さな要素に見えます。しかし実際には、座面の高さや背の傾き、肘を置く部分の形を身体が直接受け止めます。部屋を眺める目線も椅子によって変わります。家具の検討を後回しにせず、窓や照明と同じ図面の上で考えることは、こうした仕事から学べる設計の視点です。
OMソーラーとは?太陽の熱を空気で運ぶ考え方
屋根で得た熱を床下へ送る
空気集熱式のOMソーラーは、屋根で太陽熱を受けて温まった空気を、ファンとダクトで床下へ送る仕組みです。床下の蓄熱部分も利用しながら、室内へ熱を届けます。OMソーラーの取扱説明書には、集熱面、送風を担うハンドリングボックス、立ち下がりダクト、蓄熱コンクリートが示されています。出典:OMclass掲載「OMソーラーのしくみ」。

太陽光発電が光を電気へ変えるのに対して、この説明で扱っているのは太陽の熱の利用です。ただし、太陽光発電と組み合わせる製品もあるため、「OMソーラーなら発電とは無関係」と言い切るのも正確ではありません。熱を集める部分、空気を動かす部分、電気をつくる部分を分けると、仕組みを理解しやすくなります。
「自然エネルギーを利用する」という言葉から、動力をまったく使わない装置だと考えるのも適切ではありません。奥村らによるソーラーシステムハウスの特許情報には、集熱用のファンやダンパーなどが記載されています。出典:科学技術振興機構J-GLOBAL「ソーラーシステムハウス」特許情報。
開発と普及には、多くの人が関わった
一般社団法人環境共生まちづくり協会の紹介では、1995年に奥村昭雄とOM研究所が、国際太陽エネルギー学会のクリストファーA・ウィークス賞を受賞したとされています。奥村を考案者として紹介すると同時に、研究所や事業者、工務店による開発・実践があったことも押さえたい点です。出典:環境共生まちづくり協会「OMソーラー」の活動紹介。
ここでは歴史上の考え方を説明しています。現在の製品は機種や構成が異なるため、導入を検討する際は、使う製品の説明、建物の計画、冷暖房との組み合わせを一緒に確認してください。
季節と運転状態を分けて考える
挿絵は冬の日中に熱を取り込む場面に絞っています。夏も同じように熱い空気を室内へ送るという意味ではありません。OMclassの操作案内には、季節に応じた運転や、外の煙やにおいを取り込みたくない場合の停止操作などが説明されています。設備の名前だけでなく、どの状態でどう動くかを把握する必要があります。出典:OMclass「操作方法」。
また、自然の熱を使うことと、手入れが不要なことは別です。同じ操作案内には床吹出口などの手入れも記されています。家づくりで検討する場合は、性能の説明に加えて、点検する場所や日常の操作を設計者と確認しておくと、住み始めてからの使い方を想像できます。
丸谷博男・伊礼智との関係は何で確認できる?
丸谷博男は奥村の研究室・アトリエで学んだ
丸谷博男の事務所公式プロフィールは、1983年の独立まで、奥村昭雄の研究室・アトリエで家具と建築を学んだと説明しています。OMソーラーの開発期に関わったことも記載されています。出典:丸谷博男「プロフィール」。
伊礼智は奥村研究室から、丸谷の事務所へ
相羽建設の伊礼智紹介には、1985年に東京藝術大学の奥村昭雄研究室を修了した経歴が掲載されています。出典:相羽建設「つながる建築家」。同社のi-works資料は、その後に丸谷博男+エーアンドエーで働いたことも紹介しています。出典:相羽建設「i-works 4.0」。
大学の研究室で学んだ関係と、設計事務所で実務に取り組んだ関係は、一人の経歴の中に両方あり得ます。この相関図では、その違いが追えるように線を分けています。誰から誰へと一列に並べるだけでは見えない、学びの重なりがあります。

奥村昭雄の仕事から、家づくりで考えたいこと
奥村の仕事を入口にすると、間取り、家具、室内環境を同じ打ち合わせの中で考えやすくなります。たとえば、窓際に読書用の椅子を置きたいなら、眺めと明るさだけでなく、冬の朝や夏の午後にもそこで過ごすかを伝える。家族の過ごす場所と季節を具体的にすることで、設計者が検討する条件が明確になります。
広さについて迷ったときは、増沢洵の最小限住居も参考になります。小さな家で何を優先するかという問いと、その空間で心地よく過ごす条件を一緒に考えられるためです。前川國男の自邸では、中心の居間と周囲の部屋の関係を読むことができます。
打ち合わせの前に、「どの部屋がほしいか」に加えて、「どの時間に、どこで、何をして過ごしたいか」を書いてみてください。朝食、仕事、昼寝、入浴後の休息。それぞれの場面に家具と室内環境を重ねると、家族に合った住まいの条件を整理できます。
よくある質問
奥村昭雄は吉村順三の弟子ですか?
吉村順三設計事務所に所属した経歴を確認できます。本記事では、この所属関係を根拠に吉村から奥村へのつながりを説明しています。入所年は資料間で異なるため、本文で両方の記載を示しました。
奥村昭雄は設備だけを研究した人ですか?
いいえ。住宅などの建築設計、家具の設計、大学での教育にも取り組みました。OMソーラーは、その幅広い仕事の一つとして捉えると理解しやすくなります。
金山中学校は自由に建築見学できますか?
金山町の公式案内に掲載されている現役の学校で、一般向けの建築展示施設ではありません。校地や校舎へ無断で入らず、見学を希望する場合は管理者へ確認してください。個人住宅も同様に、建築作品として知られていることが公開の許可を意味するわけではありません。出典:金山町「小・中学校一覧」。
まとめ|家具と室内環境まで含めて住まいを考える
奥村昭雄は、吉村順三の事務所での実務、家具の仕事、太陽熱の利用、教育に取り組んだ建築家です。作品や経歴をたどると、住まいを建物の形だけで捉えず、そこで身体がどう過ごすかまで考えるきっかけになります。
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