家を建てるとき、「構造材は無垢材と集成材のどちらを選べばいいのか?」と疑問を持つ方は多いはずです。住宅会社によって答えが異なり、何を信じればいいか分からない——そんな声をよく聞きます。この講義では、実際に工務店を経営するつくり手4社が、それぞれの本音と選択基準を語り合っています。
- 「どちらが絶対に正解」という答えはない——4社それぞれ異なる選択をしている
- 集成材は寸法安定性の高さが選ばれる最大の理由
- 無垢材は長期耐久性と補修しやすさが強み——古社寺や古民家がその証拠
- 集成材の懸念点は接着剤の長期信頼性——ただし近年は大幅に改善
- 基本は無垢材、構造上必要な箇所だけ集成材を使う「適材適所」が現実的な答え
目次
1. 構造材の選択肢と、つくり手4社の立場

この講義では、つくり手4社が「集成材派」「無垢材派」「適材適所派」にそれぞれ分かれ、その理由を率直に語っています。答えが一つでないからこそ、考え方の根拠を理解することが重要です。
1-1. 集成材を選ぶ理由——大田さんの考え方
大田さんが集成材を選ぶ最大の理由は「寸法安定性」の高さです。無垢材は1本1本で品質のばらつきがあり、乾燥が不十分だとねじれやひずみが生じやすい。そのひずみが内装材を引っ張り、クロスの割れや建具の不具合につながるリスクがある——これが大田さんの懸念です。
「集成材と無垢材では、寸法安定性が集成材の方が高いよねって言われてる。そうすると長い目で見ると、安定し続けてくれるんじゃないかなということで、集成材を使ってます。」
また「壁の中で濡れることは通常ない」という前提から、集成材が水に弱いという懸念についてもさほど重視していません。雨仕舞いや施工が適切であれば、構造材が濡れ続けるのは雨漏りなど特別な事象に限られるという判断です。
1-2. 「国産無垢材」にこだわる——北川さんの考え方
北川さんは「できる限り無垢材であり、日本の木を使いたい」という姿勢を明確にしています。ただし、構造計算の結果として集成材でなければ強度を確保できない箇所が生じた場合は、部分的に集成材を使うことも「仕方ない」と柔軟に捉えています。
基本方針はあくまでも国産無垢材で、構造上の必要性が生じたときにのみ集成材を数本組み込む——そういった優先順位で設計しているといいます。
1-3. 「吉野・紀州・熊野の杉」への絶対的な信頼——清水さんの考え方
清水さんは「うちはもう無垢材です」と断言しています。使う木材は吉野・紀州・熊野産の杉に限定しており、「この地域の木材が日本の林業発祥の地であり、一番いい材だと信じて疑わない」と語っています。
「お寺とか1000年持っているところも、普通の木材で建てているわけです。一番持つのは無垢材やと思います。ちょっと田舎の方に行って、農家の家とか100年ぐらい持っている家ってほぼ無垢材ですし。」
清水さんがさらに重視するのが補修しやすさです。町屋の改修工事も手掛ける中で、柱の根元が腐っていても「切って交換する」という対処が技術的に可能であり、それは無垢材だからこそできること。集成材では同じ対処が難しいケースがあるという点を、経験として語っています。
1-4. 「適材適所」で安全を最優先——本田さんの考え方
本田さんは「適材適所」という言葉で自身の考えを表現しています。基本は国産の杉(無垢材)を好み、土台は桧、柱は杉でまず構造計算を行います。しかし、間取りの関係でスパンが大きくなり、無垢材では強度が不足すると判断された箇所には、迷わず集成材を使うという方針です。
「安全を犠牲にして杉で行こうっていうのがやっぱりないわけですよね。そういうときは集成材に頼るという形で。安全が何にも勝るという状況の中、ベースは国産の杉であるというのが基本の考え方。」
本田さんはさらに、集成材の信頼性について「海外では車が走る木造の橋にも集成材が使われている」という事例を挙げ、接着剤の性能が大きく向上している点にも言及しています。
2. 集成材の接着剤と無垢材の耐久性——長期信頼性をどう考えるか

つくり手たちの議論で繰り返し登場したのが、集成材の接着剤に関する話題です。かつての集成材には黒いボンド(レゾルシノール系接着剤)が使われており、長期的な剥離リスクが指摘されていました。現在では「イソシアネート系」と呼ばれる接着剤が主流となり、耐水性・耐久性ともに大幅に改善されています。車が走る木造橋にも集成材が採用されているという事実は、現代の集成材の接着性能が相当な水準に達していることを示しています。
一方、清水さんが指摘するのがメンテナンス面での違いです。無垢材の柱であれば根元が腐った箇所だけ切り取って交換できますが、集成材の場合はラミナ(薄板)が接着された状態のまま交換が必要になるため、補修の難易度が上がります。長期的なメンテナンスのしやすさという点では無垢材が有利という見方が、複数のつくり手から示されました。
3. 無垢材の品質ばらつきと寸法安定性——集成材との実際の差

無垢材は同じ樹種・同じサイズでも、1本1本で密度・含水率・木目の通り方が異なります。乾燥が不十分な場合、施工後に収縮・ねじれ・反りが生じやすく、クロスの割れや建具の動きに影響することがあります。大田さんが集成材を選ぶのは、こうした現場での経験に基づく判断です。
ただし、無垢材でもJAS規格の乾燥材(KD材)や含水率管理材を使用することで、ばらつきやねじれのリスクはある程度コントロールできます。一般的な住宅用構造材では含水率20%以下(KD材)が流通基準とされており、産地や乾燥管理が明確な木材を選ぶことが品質確保の鍵になります。清水さんや北川さんが「国産材にこだわる」理由の一つも、ここにあると考えられます。
4. 「どっちがいい?」——目的別の判断基準

この講義を通じて浮かび上がるのは、「どちらが絶対に正しい」という答えがないという事実です。4社の考え方を整理すると、判断の軸は大きく四つに分かれます。
- 寸法安定性・施工後の狂いを最小化したい → 集成材が有利(大田さん)
- 長期耐久性・補修しやすさを重視したい → 無垢材が有利(清水さん)
- 国産木材の活用・地域林業への貢献を重視する → 国産無垢材を基本に(北川さん・本田さん)
- 間取りや構造計算の結果に応じて柔軟に対応したい → 適材適所(本田さん)
本田さんが語った「安全が何にも勝る」という言葉は、この議論全体を貫く原則といえます。こだわりや思想を持つことは大切ですが、それよりも「その家の構造として安全かどうか」が最優先——その結果として集成材が必要になれば迷わず使う。この姿勢がプロとしての誠実さを表しています。
適材適所という言葉は単なる折衷案ではなく、構造計算という客観的な根拠に基づいた選択です。この講義から伝わるのは、そのことです。
よくある質問

Q. 集成材は水に弱いと聞いたのですが、構造材として問題ないですか?
大田さんは「そもそも構造材は壁の中にあり、通常の状態で濡れ続けることはない。雨漏りなど特別な事象がなければ問題はない」という考えを示しています。また本田さんは、現代の集成材に使われるイソシアネート系接着剤は耐水性が高く、海外では木造の橋にも使われていると語っています。
Q. 無垢材にするとねじれや反りが出て、内装に影響が出ることはありますか?
大田さんが指摘しているように、無垢材は乾燥が不十分だとねじれが生じやすく、クロスや建具に影響が出るリスクがあります。これが、大田さんが寸法安定性の高い集成材を選ぶ主な理由の一つです。ただし、JAS規格の乾燥材(KD材)を選ぶことでリスクをある程度抑えることができます。
Q. 100年・1000年持つ建物は無垢材で作られているというのは本当ですか?
清水さんが語っているように、古いお寺や農家の古民家は無垢材が使われており、100年・1000年という長期にわたって存続しています。清水さんはこれを「一番持つのは無垢材」という判断の根拠としています。
Q. 無垢材にこだわっていても、集成材を使う場合はありますか?
北川さんと本田さんはどちらも「ある」と答えています。構造計算の結果として、スパンが大きい箇所などで無垢材では強度が確保できないと判断された場合には、安全を優先して集成材を使います。本田さんは「安全を犠牲にして無垢材にこだわることはない」と明言しています。
Q. 無垢材を選ぶ場合、産地や樹種は関係しますか?
清水さんは吉野・紀州・熊野産の杉を「日本林業発祥の地の材であり、一番いい材だ」として使用しています。本田さんも国産の杉をベースとした設計を行っており、北川さんも「国産材を使いたい」という姿勢を持っています。産地や乾燥管理が明確な木材を選ぶことが、品質確保につながると考えられています。
構造材の選び方は、工務店それぞれの哲学や施工エリアの環境、そして設計する家の構造によって異なります。「どちらが正解か」を決めるよりも、担当するつくり手がどういう考えで何を選んでいるのかを理解することが、家づくりの判断に直結します。より詳しく知りたい方はぜひ動画をご覧ください。
この講義の出演者
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