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パッシブデザインで脱エネルギー依存の家づくり
株式会社プレゼントデザイン

パッシブデザインで脱エネルギー依存の家づくり

2021年4月7日

ー本日ご紹介するのは、広島県で設計事務所を経営されている川端さん。川端さんの設計事務所「プレゼントデザイン」は、省エネで健康、快適な住宅デザインを得意としている。

「プレゼントデザイン」の英語社名は“Pleasant Design”。英語 “Pleasant”には「喜び」「楽しみ」「快適」という意味があるそうだ。この社名には、「過ごす時間が長いお家の中でPleasantな空間をお届けしたい」という川端さんの素敵な想いが込められている。

今回はそんな川端さんに、ご自身の建築観に影響を受けたエピソードや、家づくりにおいて大切にされていること、家づくりにかかるお金についてのお話をお伺いした。

エネルギーに頼りすぎない家づくりを

川端さん(以下川端)僕の建築観に大きく影響を与えた出来事、それは「震災」です。

僕が大学3年生だったころ、阪神淡路大震災が起きました。当時は建築の道を志す学生でしたので、ボランティアに行くべきだったのですが、なんとなく怖くて行けなかったのです。現地に行き、建物が人をつぶしてしまっている現状を見るのが怖かったのだと思います。

それから大学4年生になり、就職活動が始まりました。当時の僕は、ハウスメーカーを志望していたのですが、何かの因縁で、大学の先生に紹介していただいた神戸のゼネコンへ就職することになったのです。

神戸のゼネコンでの初めての仕事は、被災された方々のマンションをつくるというものでした。そこで住人さんの引越しの手伝いをしていた際、そこにいたおばあちゃんが「お兄ちゃん、ありがとう。こんなに立派なものをつくってくれて。」という風に僕に言ってくれたのです。そのときの僕は入社1年目。大きな仕事はなにもできないですし、震災のボランティアにもいかなかった人なのに、そんな風に言っていただき、とても印象に残った出来事でした。

ーそうして川端さんは、神戸のゼネコンでの経験を経て、ニュージーランドに1年間のワーキングホリデーへ。日本へ帰国後は、滋賀県の工務店に就職、その後は奥さまの地元広島にある工務店へ転職。そこで働いている際に、川端さんの建築観に大きな影響を与えることとなる出来事が起こる。

川端:僕が広島の工務店で働いているとき、今度は東北大震災が発生しました。東北大震災が起こる一か月前に、ワーキングホリデーをしたニュージーランドでも震災があり、そちらの復興支援に行こうとしていたのですが「お前は日本を何とかしろ!」そう言われ、東北へ行こうという運びになったのです。

東京へ下る過程の福島原発付近で、僕は電気の付かなくなった沢山の家を目の当たりにしました。その建物たちを見て「人間は津波には勝てない」そう悟ると同時に、「建築を通してエネルギーの少ない社会をつくれば、原発に頼らない世の中をつくれるかもしれない」そう強く思いました。そうして僕は、独立へ向けて舵をきることとなったのです。

ープレゼントデザインのコンセプトのひとつに「パッシブデザイン」がある。これは、太陽や風に素直に設計するというものだ。太陽や風などの自然の力を利用して、エネルギーに頼りすぎない家づくり、このようなコンセプトに至ったのは、川端さんの震災での経験や、現地で感じた想いがあったからこそだろう。

ひとつひとつに意味や役割のある「窓」

ーそんな「エネルギーに頼りすぎない家づくり」をしている川端さんに、家づくりにおいてのこだわりポイントを伺った。

僕は家づくりにおいて「窓」の設計をとても大切にしています。それは先ほどの話に通じる省エネという観点からもですし、見える景色という観点からもです。窓一つをとっても、それが景色を見るための窓なのか、日の光を入れるための窓なのか、風を通すための窓なのか、ということをひとつひとつ意識しながら設計しています。

近ごろ完成したお家は、東西には窓が一枚もなく、南北にしか窓を取り入れていないお家。省エネを考慮して真南には日が入るように大きな窓を取り入れ、北側は性能の話だけでいうと小さな窓しかつけなくてもいいのですが、きれいな桜の木が見えるということで1.2m角の窓を設置。南と北で視線が抜けるので、窓は少ないですが開放感のある家に仕上がりました。

「窓を一部屋に2つ取り入れてください」という要望もお客様からよく挙がりますが、窓の向こうにどのような景色が見えるのかということを考慮しないと、2つ窓をつくったとしても結果的にカーテンで閉めっぱなしになってしまうんです。

これを聞いて「なるほど!」と私はとても納得した。私の家にもいくつか窓があるのだが、外がすぐに隣の家だったり、マンションの部屋だったりする窓はいつもカーテンで閉め切っている。最後にその窓を開けたのはいつだったかな…。

窓は、性能だけで語られることが多いのですが、窓の外にもどのような景色が見えるのかというところも、生活を豊かにするためのすごく大切な部分なんです。数字だけでなく、五感で感じる快適性、心地よさというものを大切にしていきたいと思っています。

理想は隅々までを活用できる家。大切なところにお金をかけてほしい。

ー川端さんは一級建築士のほかに、ファイナンシャルプランナーとしての顔もお持ちだ。家を建てるにあたり、一番気になる「お金」のハナシ。その「お金」に関する川端さんの考え方は、どういったものなのだろうか。

お金のかけ方、という点でも僕なりの考えがあります。

とくにお子さんが小さなころは、ご主人も奥さまも「お金」に関して、不安ばかりになってしまいますよね。お子さんが将来どんな道を歩まれるか分からないという点で、みなさん臆病になってしまうんです。もちろんそれは当然のことなのですが、先のリスクを考えすぎるのはあまりよくないと僕は考えています。

もしお子さんがすごく優秀で、「医学部に行きたい!」となった場合、そのときはそのときで教育ローンを組むなどの選択肢などもあります。制度を利用すれば意外とどうにかなる部分もあるのです。

もちろん何も考えないのはNGですが、頭でっかちになり、考えすぎるのもよくありません。最初に大きなお金はかかりますが、いいものを使って建てた家は、将来的にかかってくるランニングコストも安くなります。

家のどこにお金をかけるのかに関して言うと、広さや大きさばかりにお金をかけすぎるのは好ましくないですね。例えば大きさを重視して、省エネ性能が悪い大きな家をつくったとしましょう。

そうすると、夏は2階がめちゃくちゃ熱いとか、冬は日が当たらない部屋がめちゃくちゃ寒いとか、そのような部分が出てくるんです。人はそんな部屋を避けるので、結果的に住むスペースとして使われる部屋が限られてしまいます。

今現在2LDKや3LDKの賃貸などに住まれている方で、はっとした人はいないだろうか。一番日当たりの悪い部屋、暑い部屋、寒い部屋は物置状態…。私の家にも、使われていない物置部屋がある。考えてみると、夏には一番暑く、冬には一番寒い部屋がその部屋だ。

その反対で、大きさは必要最低限、省エネ性能などの必要な部分にお金をかけ、壁の中をしっかりとつくれば、お家の中を隅々まで活用することができます。「ロフトを作っても涼しいね」となれば、屋根裏部屋まで有効活用することができるのです。むやみやたらに家を大きくしないというのが、家づくりにおいての大原則ですね。

夫婦お互いが納得できる家づくりを

オーナー様と記念撮影

ーここまでお話をお伺いしたように、省エネやマネーに関して詳しい川端さんのもとには「あるお客さま」が、よく来られるという。最後に、そんなお客さまやこれから家を建てられる方へメッセージをいただいた。

最近僕はメールマガジンを始めました。メールマガジンでは、プレゼントデザインの設計の話や、お金の話、家の性能の話などをよくしているので、そのような性能や数値の話がお好きな男性が、僕を選んできてくださることが多い印象です。

僕を選んでくださるのは大変ありがたいことなのですが、ご主人が前のめりになりすぎて、奥さまがついていけず置いてけぼりになっていることがよくあるんです (笑)

ご主人だけが奥さまを説得するというのは、奥さまも強要されているように感じてしまうところがあると思いますので、難しいところですが、ご主人も奥さまも納得がいくかたちになるまで、一緒に時間をかけながら丁寧に進めていきたいと僕は思っています。

性能にたくさんお金をかけたのに、奥さまにとって大切なキッチンは残念…。というのはあまりよくないですよね。どちらかの気持ちにわだかまりがあると家づくりはうまくいきません。

そして、「数字」はあくまで指標でしかありません。その家が快適になるかどうかというのは、例えば窓の向こうにどんな景色が見えるのか、奥さんに機嫌よくキッチンに立ってもらえるかということも大切。性能や数値だけを追い求めて、頭でっかちになりすぎないほうがいいですね。ご夫婦でしっかりとコミュニケーションを取りながら、素敵な家づくりをしていただきたいということが僕の願いです。

(2021/05/27 取材:平井玲奈 ポートレート写真:家づくり百貨)