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地域の自然・風土・素材を活かした家づくりを
CAC建築工房(株式会社 大藤建設)

地域の自然・風土・素材を活かした家づくりを

2022年1月6日

―本日ご紹介するのは、静岡県静岡市にて工務店を営む瀧(たき)さん。瀧さんの経営される大藤建設は、親子4代にわたり社寺や仏閣の建築にも携わられてきた伝統と歴史ある建設会社だ。

長きにわたり、地元静岡で建築を家業とされてきた瀧さんは、今も昔も、そしてこれからも地域に根ざした建築会社でありたいと語る。

今回はそんな瀧さんに、ご自身の住宅観や、家づくりにおいて大切にされていること、こだわりなどについてお伺いした。

地域と共に歩む

―大藤建設が手掛ける家づくりは「心地よい木の住まい」。木材にも素材にも、こだわりを持って家づくりをされていると瀧さんは語る。

瀧さん(以下瀧):大藤建設では、可能な限り静岡県内の国産材を使った家づくりを行っています。同じ県内で採れた国産材を使うことは、環境的にも経済的にも地域の循環、地域を守ることに繋がると考えています。長い目で見たときに、家一軒だけではなく、地元の木を使うことで地域がうまく守られていくようなサイクルになってくれればという想いですね。

それは、木材だけではなく職人さんに関しても言えること。大工さんも左官屋さんも、地域を巡り巡って伝統や技術が継承されていきます。地元の職人さんが活躍できる場や、伝統が継承される環境をつくることも、地域を大切にすることに繋がると考えています。

木と自然素材で、心地のよい家を

瀧:木の家には自然素材を多く取り入れています。日本の気候風土で長い年月をかけてできた自然素材には、言葉では言い表せない感覚的な良さや、美しさがあります。そして私たち日本人は、そのような素材を使ってつくられた空間に心地よさを覚えるのです。

自然素材でつくった家は、年をとるごとの色の変化や味を楽しむこともできます。おじいちゃんおばあちゃんの、しわくちゃなやさしい笑顔を想像してみてください。

シワやシミが沢山あっても、皆さんはそのお顔を「とてもいい表情をしているな」「美しい笑顔だな」というように思うのではないでしょうか。木のお家もそれと同じで、年をとったぶん、味が出てきて美しくなってゆくのです。自分たちが年をとって髪型や体系が変わっていくのと同じで、家も家族のように一緒に年をとっていく。

そのような捉え方をしていただきたいですね。建てて何年か経ったときにワックスがけなども必要になってくるのですが、その際にご家族も一緒に手を動かしてワックスがけをしていただいても、きっといい思い出になるのではないでしょうか。そのようにして、家も家族の一員のように接していただけると嬉しいです。

―既製品で出来たお家は、塗装をすれば直ぐにきれいにはなるかもしれないが、自分たちが年をとったときにピカピカに塗られた家に出入りする姿はなんだか「しっくり」こない。

自然素材でできたお家は、自分たちと一緒に年をとり色味も風合いも変わっていくからこそ、しっくりもくるし愛着も湧きそうだ。

瀧:今風のお家は、20代30代の方から見るとおしゃれだなと思う部分もあるかもしれませんが、そのお家とともに年をとっていけるかということを考えてみてください。そうすると、流行ではなく、長く使えるベーシックで飽きの来ない素材でできたもののほうが、長く残るのです。

お家の家具や照明も同じような観点で選んでいただいたほうが、長く大切に使い続け、想い出深いものになっていくのではないでしょうか。

静岡の風土を活かした家づくりを

瀧:大藤建設では地域の気候や自然、景色、地域性も大切にしてます。日本はそれぞれの地域で色々な気候が見られます。暖かさ、寒さ、風雨、地震など、静岡での家づくりには静岡の気候にあった家づくりが、長く暮らし住みつぐことのできる家の為だと思っています。

また、海が近くにある家でしたら、お庭から海が見えるようにつくってあげたり、きれいな山並みが見えるのであれば、そちら側に庭や窓をつくってあげたりなど、その地域の良さを取り入れるように意識しています。

私たちのように、昔から静岡に住んでいる人たちは富士山が見えることが当たり前になってしまっていますが、たくさんの地方の工務店さんを巡らせていただいて、富士山が見えることは本当に特別なことなんだと気づかされる場面がありました。静岡の自然や景色を活かし、地域の風土や環境を大切にした家づくりをこれからもしていきたいですね。

暮らしに焦点を当て、記憶に残る空間をつくる

―瀧さんにとっての「いい家」とはどんな家なのだろうか。家づくりをするにあたり大切にされていらっしゃることについてもお伺いしてみた。

瀧:家を建てるときは、どうしても性能や大きさにこだわってしまいがち。もちろん耐震性や断熱気密、耐久性は大切ですし、絶対に損なわれてはならない部分です。ですが大藤建設では、それらのハード面をしっかりとつくったうえで、その先にある住む人の「暮らし方」や「趣味」に焦点を当てた家づくりをしたいと考えております。

みなさん自身の子供時代を思い浮かべてみてください。

こんな設備があって、こんな大きさの家だったなとか、こんな家でかっこよかったなというように、形やスペックよりも「この場所でBBQをしたな」「ここでお父さんとお母さんとこんな勉強をしたな」「庭の植木に水やりをしたな」など、家を思い返すときには、どこでどんな暮らしをしていたか、何をやっていたかが思い出として強く残っているのではないでしょうか。

私は子供の頃、植木の水やり当番でした。

今でも自分が庭の水やりをするときに「昔の家でも水やりをしていたな」と思い出します。なので、自分の子どもにも思い出を残せるよう、積極的に庭の手入れの手伝いをさせたり、薪ストーブの薪の支度を手伝わせたりなどもしています。

アウトドアが好きなご家族でしたら家でBBQのできるスペースや、テントを張れるスペースを設けたりするのもいいですし、読書をするのが好きな家族でしたら、それぞれの落ち着く読書スペースが色々な場所にあると楽しそうですね。映画鑑賞がご趣味でしたらテレビ周りを充実させたりなど、それぞれの家族に合った楽しみ方のできる家が理想です。

このように「暮らし方」や「趣味」に焦点を当てて家づくりをした方が、のちの記憶や思い出として心に家が残り続けます。設計の相談の際に「今は子どもが小さくて趣味に充てる時間がなくて…」という方もいらっしゃいますが、その際には、結婚前はどのような趣味をお持ちだったか、理想の老後の暮らし方をどうイメージしていらっしゃるのか、インドア派なのかアウトドア派なのかなどをヒアリングしながら、お客さまにぴったりな暮らし方をご提案してけたらと思っています。とにかく家でいっぱい思い出をつくって、いっぱい好きになって欲しい…。それが私の想いです。

また家づくりは、どうしてもお子さま中心で考えがち。ですがご夫婦2人の趣味や理想もたくさん取り入れていただけると、さらに素敵なお家になっていくのではと私は考えています。子どもがお家にいるのは、せいぜい20年ほど。

お子さまが巣立った後の、ご夫婦2人での時間のほうが倍ほど多いのです。自分たちは将来どのような暮らしがしたいのか、生き方をしたいのか。そのようなことを改めてご夫婦で話し合い、理想の家づくりをしていってください。

(2021/05/30 取材:平井玲奈 写真:家づくり百科)