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人生設計から生まれる家づくり
株式会社 北村建築工房

人生設計から生まれる家づくり

2021年8月31日

「家づくりの答えは、みなさんの中にあるのです」

ーそう語るのは、神奈川県横須賀市で工務店を営む北村さん。

北村さんの工務店、「北村建築工房」では、住まう人の理想の人生像や生き方に焦点を当てた、個性あふれる家づくりを行っている。

創業100年を迎えた老舗工務店の経営者·北村さんに、家づくりの流れや大切にしている想い、そしてこれから家づくりを行う方へメッセージをいただいた。

家づくりは理想の人生設計から生まれた結果論

北村建築工房事務所

家づくりをこれから始める方の中には、「まず初めに土地を決める!」と考えている方は多いのではないだろうか。北村建築工房では、土地探しや家づくりに入る前に、ある“大切な計画”をお客さまに立てていただくそうだ。

北村さん(以下北村)私たちは、土地探しや間取り、お金のことを考える前に、まずお客さまに理想の生き方·人生プランを立てていただきます。「5年、10年、30年…後はこうなりたい」と一本道を決めていただいて、ようやく家づくりの話に入るのです。北村建築工房では、この人生設計をとても大切にしているため、半年~1年の時間をかける場合だってあります。

家づくりにおいては、みなさんの人生観からくる「本当に必要なもの」を、優先順位をつけて見つけ出す作業が、なによりも一番大事。時間をかけて理想の生き方を追求していただいてから、ようやく金額と土地探しの段階に。

土地探しに入った時点で、人生プランから予算、家のイメージ、ボリュームなどがすべて見えている状態でなければなりません。「理想の生き方を実現できる家をつくるには、このぐらいのお金を取っておかなければならない。だから土地にはこれぐらいのお金を使おう」と、最後に土地探しが来るのです。

そして私たちは、プランをひとつしか出しません。

みなさんの人生観や生き方をすべて私たちが聞き、消化し、同じ家族のような感覚を持って、プロとしての知見から答えを出します。プランはみなさんの理想の生き方·人生観の「結果論」です。いくつもの選択肢を、むやみに出すものではないと考えています。

生涯を通して後悔が生まれない家をつくるために

北村:家づくりはどうしてもお子さま中心に考えてしまいがち。

ですが、子どもがいる時間は、人生のうちのたった20年ほど。その後は夫婦二人の時間、または自分一人の時間が続きます。「老後は都内のバリアフリーマンションに引っ越そう」「田舎に移住しよう」など、現代はさまざまな選択肢があります。であれば、必ずしも建てる家がバリアフリーである必要はありませんよね。

「子どもがいる間が一番プレミアムな時期だから、それ以降は惰性で構わない」「段差があろうが構わない。リズムがあって、みんなが楽しく暮らせる家がいい!」という方もいれば、「子どもがいる時代は過渡期だから、老後に慎ましく暮らせるコンパクトな家がいい」と考える方もいます。

このように目指すべきり最終形を、まず初めに決めておくことで、生涯に渡って後悔のない家づくりが叶うのです。

価値観の共有で化学反応を起こす

ー北村建築工房の百年変わらぬ想い、「一緒につくる」。この言葉には、北村さんのどのような考えが詰まっているのだろうか。そのこだわりについてお伺いした。

北村:私たちがとても大切にしている考え、それは「お客さまと一緒に家をつくる」ということ。家づくりは、お客さまの理想をどう具現化するかという仕事ですが、私たちがただイエスマンになれば良いというものではないと思っています。私たちが良いと思うつくり方、良いと思う素材、これらをベースにし、私たちの価値観を尊重してくださるお客さまと一緒にモノづくりをする。

少し生意気に感じられるかもしれませんが、お客さまだけが選ぶ側ではなく、私たちも選ぶ側だと思っています。私もスタッフも、やりがいに命を懸けて家をつくっていると言っても過言ではありません。

私たちの価値観というベースがあり、そこにお客さまの個性や人生観が化学反応で掛け合わされ、おもしろいカタチになってゆきます。価値観の共有ができるお客さまとだからこそ、いいモノが生まれるのです。

そういう意味で、私たちはとても職人気質。例えば、目の前に「2億円の家を建ててほしい」と言っているお客さがまいるとします。商売人であれば「美味しい仕事だ!」と思って受けるのが正解なのかもしれませんが、私たちは「なんだか合わないな」と感じたら、きっと仕事を受けないという選択をするでしょう。

「面白い!」「このお客さまの家をつくりたい!」と思ったらやる。思わなければやらない。会社としての利益を追求するのではなく、感覚的、職人的なスタンスをあえて貫いています。

また、価値観が合わないまま家づくりをしてしまうと、お客さまにとっても残念な結果になってしまいます。共感·価値観·美意識、家づくりに着手する前にこれらを確認することは、お客さまにとっても、とても大切なこと。

家づくりを検討しだすと、まず初めに「自分たちの夢をかなえてくれる会社ってどこなんだろう」とハウスメーカーや工務店を探すところから始まるかと思います。そこで訪ねた会社に、さも自分たちの願いを全て叶えてくれるかのように語られ、ホストのように手厚くもてなされると「ここなら理想を全部叶えてくれるはず…!」と勘違いしてしまうのです。

家づくりの「答え」は、みなさんの中にある

北村建築工房の制服のロゴ

北村:今は情報過多の時代。きっと家づくりに迷走している方もたくさんいらっしゃるかと思います。そんなみなさんに一番に伝えたいことは、「何のために家づくりをするのか」に立ち返り、突き詰めてほしいということ。

なぜ家づくりをするのか、自分たちの家に本当に必要なものは何なのか、常に“優先順位”を意識し、考え直してみてください。家づくりは優先順位との闘い。最初から最後まで、優先順位がつきまといます。

この優先順位を考えずにいると、いろんな情報を集め「あれも欲しい、これも欲しい」「だけどお金が足りないかもなあ」と思いつつも、心のどこかで救済を求め、全てを叶えてくれる人を探し続けてしまうのです。私たちはマジシャンではありません。

思ってもみなかったような、すべての理想を叶えてくれる奇抜なプランを出すことは不可能なのです。工務店やハウスメーカーに「頼っている」という感覚ではなく、何のためにやるのか、優先順位を持って、相手に渡せられるようになって初めて、本当に目指す家づくりや暮らしが実現できると私は考えています。

「答え」はみなさんの中にしかないのです

そして、家づくりはバランスが全て。

耐震·断熱気密·機能性など、どこかだけが突出している家が、良い家なのかと言われると、そうではありません。

よくありがちなのが「せめてこれぐらいで…」「安くて良いもので…」と、すべての項目で中の上ぐらいの要望を並べること。そうすると皆さんが思っている以上に、大きなお金が掛かる場合がほとんど。

トータルのバランスをほどよく取ったうえで、予算的に上げられそうなのであれば、もっとも大切なところから一段階上げていく。家は長く暮らす場所ですから、バランスを無視してしまうと、あとから絶対に後悔が生まれてしまいます。「安くて良いものを…」という感覚も捨ててください。

良いものには必ず理由があり、だからこそ費用もかかるのです。安い100円均一の商品や消耗品と、家は違います。これらの感覚を間違えないで、みなさんには家づくりをしていただきたい。それが私の想いです。

(2021/08/13 取材:平井玲奈 写真:家づくり百貨)