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子どもにとって「愛されて育った記憶」の残る家を
でんホーム 株式会社

子どもにとって「愛されて育った記憶」の残る家を

2021年4月2日

「愛されて育った場所の記憶は、子どもにとって生きる活力となります。」

ーそう語るのは、福岡県福岡市で工務店を経営する藤本香織さん。藤本さんの工務店「でんホーム」では、愛にあふれる家族に安心・安全・価値を届ける家づくりをしている。

そんな「でんホーム」の社長で「でんさん」の愛称を持つ藤本さんは、建設業界では珍しい女性経営者だ。経営者であり、一級建築士でもあり、そして2児の母でもある藤本さんに、「でんホーム」の立ち上げストーリや、価値ある家とはどんな家なのか、などについてお伺いした。

「でんホーム」のはじまり。

でんホームモデルハウス

藤本さん(以下藤本)造園屋を営む家族のもとで育った私は、もともと建築家になりたかったという父の影響もあり、幼いころからモノづくりや建築に興味津々。

大学は工学部に入学し建築を専攻、大学卒業後は四国の建設会社に入社しました。その後家庭の事情があり、地元の下関へ戻り工務店に勤務、その後「もう一度設計を学び直したい!」と思い、福岡のとある建築家のもとで働くこととなりました。

その設計事務所は、何億もするような大規模な建物の設計をするような事務所でした。そこでは大規模な施設を設計する楽しさはありましたが、手掛ける施設が大きすぎるがゆえに、実際にその施設に住む人、使う人の顔が見えず「なんだか血が通っていないな」と感じるようにもなったのです。

老人ホームの設計をしているのに、法律やコストに縛られ、おじいちゃんおばあちゃんにとって本当に良いものをつくれない。「もっとこうしたほうがいいのでは?」と私が提案したところで認めてもらえるわけもありません。

そんなもどかしさを日々感じるなか、「その人が持っているお金の中で、最大限の良いものを提案したい」「人々にとって価値ある住宅をつくりたい」と思うようになり、再び住宅を手掛けたいと感じるようになりました。

ー自身の今後のキャリアについて見つめ直す、そのようなタイミングで、藤本さんは夫である竹内さんと出会うこととなる。

藤本:夫からの後押しもあり、私は工務店として独立することを決心。もともとは設計事務所での独立を考えていたのですが、設計事務所と施工のどちらともを行える工務店をやりたいと考えるようになったのです。設計事務所はあくまで家の設計を行うところなので、実際に工事を行う現場とあまり関わり合いがありません。工事自体は地元の工務店が行うので、メンテナンスや、不具合が起こったときの最終的な責任は、その工務店が負うことになります。

でもその不具合は、設計の段階で防ぐことができたのかもしれない。設計事務所だけでは、つくった建物を本当の意味で守ることができない。そう感じ、設計から施工も行える工務店をやりたいと思うようになりました。

ですが当初は「30歳手前の、社会に出て10年も経ってないような人間で、設計以外の実績も何もない自分が、工務店なんてできるわけがない」、そう思っていた部分もありました。

やはり設計事務所で下請けの仕事をしながら、なんとか食べられるようになろうか、そう思っていたのですが、そのころ出会った夫の竹内が「やりたいと本気で思えばできるよ。自分もできることを手伝うから工務店をやってみたら?」と背中を押してくれたのです。

当時の私は福岡での地縁も、実績も、何もない状態。その状態から、「お客さんの一生に一度のお家の設計・施工をお任せしていただくわけにはいかない」そう思い、まずは竹内と一緒に、家づくりや経営について研究を始めました。

ー藤本さんは、竹内さんと共に、全国100カ所以上もの工務店やその地域にある古民家などを半年間かけて周り「本当に良い住まいとは何か」の探求を行ったそうだ。このエピソードからも、藤本さんの家づくりに対する強い想いや誠実さが伝わってきた。

全国の各地域で頑張っている工務店を見学していく中で分かったことは、皆さん本当にさまざまなバックグラウンドがあるということ、そして事業としての工務店を成立させていくために必要なものは「資金」と「一軒の理想の家」だということ。こうして「でんホーム」は資金をゼロから集めるところ、一軒のモデルハウスを建てるところからスタートしたのです。

人生を変えたお客様からの言葉。

ー当時30歳前後で起業を決意された藤本さん。その道のりは険しいものだった。ときには「あんたなんかに何ができるの?」と厳しい言葉を掛られることもあったそうだ。それでも、なぜ藤本さんはこれほどまでの情熱をもち、住宅づくりに取り組まれているのだろうか。

藤本:新卒で勤めた会社で私のことを指名してくださったお客さまからいただいたお手紙が、ずっと私を支えてくれました。お手紙をいただいたその当時は「うれしいな」と単純に感じただけだったのですが、そのお手紙を数年後にふと見直す機会があったんです。

でんホームを立ち上げる前の出来事なのですが、恋人とも別れ、福岡の設計事務所での仕事もうまくいかず、精神的につらかった時期がありました。そんなとき、偶然その手紙を見つけたんです。手紙には「藤本さんで本当に良かった」「たくさんわがままを聞いてもらってありがとうございます」と感謝の言葉が便箋3ページにもわたって書かれていたのです。

「私にも生きている意味があった」「建築をしていてよかった」心からそう思いました。

そして、「お客さまから直接感謝の言葉をもらえる、この素晴らしい仕事を一生続けていこう」と決意しました。そのお客さまからの手紙がなかったら、今、家づくりの仕事をやっていないかもしれません。そう感じるほど、今でもずっと心に残っているエピソードです。

普遍的で愛され続ける家こそが、「価値ある家」

ー「でんホーム」の設立から8年目の2020年11月、同社の施工した家が「第6回福岡木造・木質建築賞」優秀賞を受賞。藤本さんにとって大きな節目を迎えることとなる。そんな現在の藤本さんに、「家づくりで大切にされていること」についてお伺いした。

藤本:私が家づくりにおいて大切にしているものは大きく3つ、安全性・快適性、そして価値です。私はよく家のことを「住まい」と表現するのですが、住まいの「す」は鳥の巣の「巣」と同じだと思っています。巣は家族の安全を守り、子どもの成長をしっかりと見守れるものでなければいけません。

そのためにも、まず一つ目に「安全性」を挙げます。

設計でいくら丈夫な建物をつくったとしても、施工に問題があれば意味がありません。そして地震に弱ければ意味がありません。

2つ目に「快適性」です。

冬は暖かくて、夏は涼しくて快適な住まいであること、外で頑張って働いてきて、家に帰ってきたときにリラックスできる空間であること。この安全性と快適性は家づくりの基盤となります。いくらデザインが素敵だからとか、素材がいいからといっても、この2つができていなければよい家とは言えません。

最後に3つ目「価値」です。

私が考える価値ある家とは、その家に住まわれる方にとってだけではなく、近隣や社会、その時代にとっても価値のある建物であるということ。例えば、同じ時代につくられた建物があったとして、一方は50年で壊されますが、一方は100年経っても「素敵だから残しておきたいね」と思われる建物。

そこに建っているだけで、その風景そのものが「かっこいい」と思えるような建物です。そのような普遍的な美しさを持った家が、本当の意味で価値ある家だと考えています。

どの時代の誰もが美しいと思えるようなデザイン、素材、佇まいをどこまで考えられるか、ということが私たちの仕事です。

ー藤本さんはお客さまのヒアリングをする際には、お客さまの現在のご自宅に訪問され、直接ご家庭の様子をうかがうそうだ。

藤本:家をつくるときは、お客さんが言葉にしないところも汲み取れるように心がけています。お家を建てられるお客さんの今住まわれているお家にお伺いをして、どんなインテリアが好きなのかなとか、どんな暮らし方をしているのかなとか、どんな趣味を持たれているのかなとか、そういったものからヒントを得ていきます。

お子さんの教育方針は、本当にご家庭それぞれで面白いですね。

ご両親のいうことをピシっと聞くお子さんもいますし、やんちゃで散らかし放題のお子さんもいて。すごくのびのびしているのに、家はものすごくキレイに整えられているとか。そのような様子を実際に見て、「この家族がリラックスして過ごせるようなお家ってどんなお家かな?」「この家族が幸せと感じるお家ってどんなお家かな?」と考えを巡らせながら、設計をしていきます。

ー家の雰囲気やインテリア、お子さんの様子などから、そのご家族にぴったりの家づくりを提案する。2児の母でもある藤本さんならではの細やかな視点だ。藤本さんの気さくさや柔らかな雰囲気からも、子育てに関する悩みなども相談しながら、一緒にぴったりの家づくりをしていけそうだなと感じた。

愛されて育った場所の記憶は、子どもにとって生きる活力になる。

藤本:もしもご夫婦お二人で住まれるのであれば、マンションでも悪くはないかなと私は思っています。ですが、お子さんがいるご家庭、いずれお子さんがほしいと思われているご夫婦さんには一軒家がいいかなと個人的には思いますね。

ご実家が一軒家の皆さんは、実家のここにキッチンがあって、お庭があって、隣近所にこんな場所があって、こんなお花が咲いてて、初夏にあんな匂いがして、あのお家でお父さんお母さんとこんなことをしたな、あんなことを話したな…。ということを思い出せるのではないでしょうか。

ー私は子どもの頃に、一軒家からマンションに引越しした経験があるのだが、確かに藤本さんのいうように、一軒家に住んでいたころの記憶のほうが鮮明に残っている。賃貸マンションに引っ越してからの記憶は、不思議なことにほとんど残っていない。

自分が愛され育った場所や背景の記憶というものは、大人になって生きる活力にもなりますし、バックボーンというか、価値観になっていくんです。親が選んだ家具だったり、親の暮らし方だったり、庭の手入れをしている後ろ姿だったり、そういうものは子どもの記憶に絶対に刻まれていきます。

なので、マンションでも悪くはないと思うのですが、より豊かな人生を送る、子どもの力になってあげられるような記憶を残すという意味では、戸建てのほうがオリジナリティがあると私個人は考えています。

ただ転勤族の方だと、いずれお家を手放さないといけないとなったときはマンションのほうが売却価格は一般的には高いですし、将来的には地元に戻らなくてはならないなど、人によってさまざまな事情があるかと思いますので、ご家族やご両親ともよく相談なさってください。自分と配偶者がどんな人生を送りたいのかを良く考え、話し合ってから住まいのことも考えるとよいと思います。

ー最後に藤本さんから、家づくりをこれから行う方へのアドバイスをいただいた。

家を建てるときには、長い目で見て生涯にわたって誇れる家を建てていただきたいと思っています。今自分が好きなものだけでなく、40代・50代・60代・70代と年を重ねても素敵だと感じ続けられる家、流行に媚びない家、自分の子どもや孫にも誇れるような家をぜひ建てられてください。