こんばんは ダイシンビルド 清水です
「パッシブハウスは世界基準です」
「世界で最も厳しい住宅基準です」
住宅業界では、こんな言葉を見かけることがあります。
でも私は、この言い方には凄く違和感があります。
最初に断っておくと、私はパッシブハウスが悪いと言っているわけではありません。
むしろ、非常に優れた高性能住宅の考え方の一つだと思っています。
年間暖房需要を非常に小さくすること。
高い気密性能を求めること。
断熱材を厚くするだけではなく、
窓、熱橋、換気、日射などを含めて、
建物全体のエネルギー性能を計算すること。
こうした考え方には、日本の住宅業界も学ぶところがたくさんあります。
では、なぜ私が「世界基準」「世界で最も厳しい基準」という言葉に違和感を持つのか。
理由は簡単です。
世界を見渡してみれば、高性能住宅はパッシブハウスだけではないからです。
■ 世界にはさまざまな高性能住宅がある
たとえばスイスには、
「Minergie-P」
「Minergie-A」
があります。
Minergie-Pは、建物外皮の性能を非常に重視する高性能住宅の基準です。
一方のMinergie-Aは、断熱性能だけではなく、
太陽光発電なども含めて建物全体のエネルギー収支を考えます。
アメリカには、
「Phius CORE」
「Phius ZERO」
があります。
Phiusの面白いところは、
地域ごとの気候条件などを考慮して要求性能を設定していることです。
さらにPhius ZEROになると、高断熱・高気密だけではなく、
再生可能エネルギーを利用してネット・ソースエネルギーゼロを目指します。
そして、パッシブハウス自身にも、
Passive House Classic
Passive House Plus
Passive House Premium
という段階があります。
つまり、一口に「パッシブハウス」と言っても、
その先に再生可能エネルギーまで含めた上位クラスが存在するわけです。
さらに世界を見れば、
イタリアのCasaClima(KlimaHaus)
オーストリアのklimaaktiv
カナダのR-2000やNet Zero Energy Housing
フランスのRE2020
オーストラリアのNatHERS
など、それぞれの国の気候やエネルギー事情、
政策に合わせた高性能住宅の考え方があります。
■ そして日本にも「Q1.0住宅」がある
海外ばかりを見る必要もありません。
日本にも、長年にわたって
高断熱・高気密住宅を研究してきた歴史があります。
その代表的なものの一つが、
新木造住宅技術研究協議会(新住協)の「Q1.0住宅」です。
Q1.0住宅の大きな特徴は、
単純に「UA値はいくつか」という断熱性能だけで住宅を評価するのではなく、
暖房に必要となるエネルギーをどこまで削減できるのか、
(暖房費の削減に拘りをもってます)
という視点を持っていることです。
そしてQ1.0住宅には、
地域の気候条件などを考慮したレベルがあります。
その中でもQ1.0住宅レベル4は、
非常に高い省エネルギー性能を目指す住宅です。
ここで興味深いのが、パッシブハウスとの比較です。
Q1.0住宅とパッシブハウスは、
計算方法も認証方法も同じではありません。
ですから、
「Q1.0住宅レベル4=パッシブハウス」
と、そのままイコールで結ぶことはできません。
しかし、暖房エネルギーを大幅に削減するという目標で見れば、
Q1.0住宅レベル4はパッシブハウスと比較対象になる非常に高い水準です。
つまり、
「世界最高水準の高性能住宅を造ろうと思ったら、海外の基準しか選択肢がない」
ということでもないのです。
日本の気候の中で、
日本の住宅を研究し続けてきたQ1.0住宅という考え方もあります。
■ 「どれが世界一か?」ではない
ここで大切なのは、
「結局、どれが一番性能がいいの?」
というランキングを作ることではないと思っています。
そもそも、それぞれ評価しているものが違うからです。
断熱性能。
暖房エネルギー。
冷房エネルギー。
気密性能。
熱橋。
換気。
日射取得。
夏の日射遮蔽。
再生可能エネルギー。
建材製造時のCO?。
室内空気質。
評価する範囲も計算方法も違います。
違う物差しで測っているものを並べて、
「これが世界一」
と言ってしまうこと自体に無理があります。
■ 「世界基準」という言葉より大切なこと
私は、
「パッシブハウスは世界基準だから正しい」
という説明より、
「世界にはさまざまな高性能住宅の考え方があり、
その中の一つがパッシブハウスである」
という説明の方が正確だと思っています。
そして、それは海外だけの話でもありません。
日本にもQ1.0住宅があります。
HEAT20という考え方もあります。
日本の研究者や実務者が、
日本の気候と住宅について長年研究してきた蓄積があります。
パッシブハウスにはパッシブハウスの優れたところがあります。
Q1.0住宅にはQ1.0住宅の優れたところがあります。
MinergieにはMinergieの考え方があります。
PhiusにはPhiusの考え方があります。
重要なのは、どれか一つを「世界一」と決めることではありません。
それぞれが何を目的として、何を計算し、何を評価しているのか。
そこを正確に理解することです。
■ 日本で家を建てるのですから
私たちが住宅を建てる場所は日本です。
日本には、日本特有の気候があります。
そして同じ日本でも、北海道と関西ではまったく違います。
関西であれば、冬の暖房性能だけを考えていればいいわけではありません。
夏の暑さがあります。
強い日射があります。
そして高い湿度があります。
冷房と除湿も非常に重要です。
だから私は、
「○○が世界一だから、それをそのまま採用すれば最高の住宅になる」
という宣伝、広告には違和感があります
世界にある優れた住宅を幅広く知る。
日本で積み重ねられてきた研究も知る。
それぞれの良いところを理解する。
そのうえで、
その地域の気候、
その土地の日射、
建物の形、
窓の取り方、
そして、そこで暮らす人にとって何が必要なのかを考える。
それが本来の高性能住宅づくりではないでしょうか。
パッシブハウスが良い、悪い、という話ではありません。
パッシブハウスは、世界に数多く存在する優れた高性能住宅の考え方の一つです。
そして日本にも、Q1.0住宅をはじめ、
世界の高性能住宅と比較できる住宅づくりの考え方があります。
だからこそ、
「世界一」
「世界基準」
というキャッチコピーだけで住宅性能を判断するのではなく、
どんな暮らしをしたいか?
それが大事です
高性能住宅は手段です
目的は「快適な暮らし」のはずです
手段のみが目立つので困りますね
では明日も宜しくです
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