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高気密高断熱と木の心地よさ、どっちを優先すべき?プロが語るベストバランス論【家百講座 戸建て編 #09】
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高気密高断熱と木の心地よさ、どっちを優先すべき?プロが語るベストバランス論【家百講座 戸建て編 #09】

2026年7月19日

注文住宅を検討していると、必ずこの問いに突き当たります。「高気密高断熱の性能」と「木の心地よさ」、どちらを優先すべきか。本講義では、関西で活躍する工務店のつくり手4名が、自身の家づくりの哲学をもとに本音で語り合います。先に言っておくと、「どちらか一方」という選択肢は、プロの目線には存在しません。

この記事の結論はこちら
  • 性能・デザイン・心地よさの3つが揃って初めて「いい家」になる
  • 断熱性能は後からのリフォームが高コスト、だから新築時に優先すべき
  • 性能が低いと、木の美しさを「味わう余裕」すら失われる
  • 家づくりは音楽ミキサーのつまみを微調整するようなベストバランスの探求
  • 予算の上限の中であらゆる要素をチューニングするのがつくり手の仕事

1. 「どっちが大事?」という問いの立て方そのものを問い直す

高気密高断熱 木の家の「どっちが大事?」という問いの立て方そのものを問い直すを表す図解イラスト

議論の出発点は、つくり手たちがそれぞれの考えをホワイトボードに書き出すところから始まりました。「性能優先」「バランス」「どちらか一方には絞れない」と答えはわずかに異なっていましたが、全員に共通していたのは「どちらか1つだけでは家は成立しない」という認識でした。

本田さんはこのテーマを「引っかけ問題のようなもの」と振り返っています。どちらか一方を選ばせようとする問い自体が、家づくりの本質を見誤らせる罠になりかねない——そういう意味です。

2. 「性能を先に」と語るつくり手の論理

高気密高断熱 木の家 どっちの「性能を先に」と語るつくり手の論理を表す図解イラスト

田さんは「どちらかと言えば性能(高気密高断熱)を優先する」としながらも、木の心地よさも大切にしたいと明言しています。その判断の根拠は、後から変えるときのコスト差です。

木の表面仕上げや内装のリフォームと違って、断熱性能のリフォームははるかに高コストになります。壁を剥がして断熱材を入れ替える工事は、規模がまるで違うからです。だから田さんは「まず性能をしっかり確保した上で、面積を少し抑えるなどしてバランスを取る」という立場をとります。性能を先に——その判断の背後にあるのは、住宅性能は建てた後に変えにくいという現実です。

3. パッシブハウスを手がけるつくり手が「心地よさ」を語る理由

高気密高断熱 木の家 どっちのパッシブハウスを手がけるつくり手が「心地よさ」を語る理由を表す図解イラスト

北川さんが選んだ言葉は「バランス」でした。パッシブハウスの設計・施工も手がける立場でありながら、あえて木の心地よさとのバランスを重視すると語っています。

「パッシブハウスを作ったとしても、木の心地よさが全くないんやったら、それはなんか違うなと思う。そこにお金を使うなら、もっとバランスよくやるべきかなと思う」

性能一辺倒のビニールハウスのような空間と、木の温もりと高い性能を両立した空間では、生活の質がまるで違います。北川さんが問うているのは、性能のために心地よさを全部削るくらいなら、そのコストは別のところに使うべきではないか、ということです。

4. 「性能も木の心地よさも、どちらも借が大事」という境地

高気密高断熱 木の家 どっちの「性能も木の心地よさも、どちらも借が大事」という境地を表す図解イラスト

新さんは大阪・京都という都市部での家づくりを引き合いに出しながら、両者の関係を語ります。

「山の眺めをずっと楽しもうと思ったら、性能がなかったらダメですし、木の感じもなかったら無機質な感じでずっと見てても綺麗じゃないような気もする。借が大事、大事」

つくり手4名が笑いながら「大事」と繰り返したこの場面は、議論の核心をよく表しています。問いを突き詰めていくと、「全部大事」という答えに自然と辿り着くのです。

5. 本田さんが語る「性能・デザイン・心地よさ」の三位一体

高気密高断熱 木の家 どっちの本田さんが語る「性能・デザイン・心地よさ」の三位一体を表す図解イラスト

本田さんは仕事を始めてからずっと「性能とデザインの両立」を掲げてきましたが、最近そこに「心地よさ」という3つ目の要素を加えるようになったと話します。

「性能とデザインと心地よさ、この3つを叶えなければ、家として何かが欠けた状態になってしまう」

「心地よさ」を構成するのは、足触り、香り、目に映る木の美しさといった五感への働きかけです。本田さんはこう言います。「ビニールクロスを眺めてウキウキする人はあまりいないが、木目の美しさを見て『綺麗だな』と感じる感覚は確かに存在する」。

性能が低ければ、その木の美しさを「味わう余裕」すら持てなくなる。寒さや暑さに耐えながら木の良さを楽しむことはできない——だからどこか1つが欠ければ、いい家にはなりにくいというのが、本田さんの家づくりの核心にある考え方です。

6. 住宅は「音楽ミキサー」——プロが使うベストバランスの比喩

高気密高断熱 木の家 どっちの住宅は「音楽ミキサー」——プロが使うベストバランスの比喩を表す図解イラスト

本田さんがお客さんへの説明でよく使う例えが、「車の仕組み」と「音楽プロデューサーのミキシング」です。

車がどれほど複雑な部品の集合体かは誰もが感覚的に知っていますが、本田さんは「住宅は、その車よりも部品数が多い」と言います。それほど複雑な構造物だからこそ、「1つだけ頑張ってもダメ」という論理が成り立ちます。

「音楽プロデューサーがいろんなつまみをこちこちいじって仕上げるように、いろんなボリュームでバランスを整えているのが私たちの仕事。それが住宅の設計・施工の面白さでもある」

断熱、気密、耐震、防雨、デザイン、素材の心地よさ——それぞれの要素を、予算という制約の中で最適なバランスに調整していく。しかも終盤に1つの要素を大きく変えると全体の調整をやり直すことになり、コストも時間もかかります。だから慎重に、1つずつ順序立てて考えていくことが重要だと本田さんは語っています。

7. よくある質問:高気密高断熱と木の心地よさ

木の家 どっちのよくある質問:高気密高断熱と木の心地よさを表す図解イラスト

Q. 高気密高断熱と木の心地よさ、本当にどちらか一方を選ばないといけないのでしょうか?

A. つくり手全員が口をそろえているのは「どちらか一方だけでは家として欠けた状態になる」ということです。性能が低ければ木の美しさを味わう余裕すらなくなり、逆に木の心地よさを全て削れば単なる高性能の箱になってしまいます。「どちらか」ではなく「両立させる方法を考える」のがプロの仕事です。

Q. 断熱性能は後から上げられないのでしょうか?

A. 田さんが明確に語っています。断熱リフォームは内装の表面を貼り替えるリフォームとは比較にならないほどコストがかかります。壁や天井を解体して断熱材を入れ替えるような大がかりな工事が必要になるためです。だからこそ「新築時に性能をしっかり確保する」ことを優先したほうがよい、というのが田さんの立場です。

Q. パッシブハウスを建てれば、性能と心地よさは両立できますか?

A. 北川さんは「パッシブハウスを建てても、木の心地よさが全くないのであればそれは違う」と語っています。高い性能基準を満たすことと、住まいの心地よさを両立することは別の問題です。性能だけで素材の温もりがない家よりも、両者のバランスを取った家の方が長く幸せに暮らせる——それがつくり手たちの共通した考え方です。

Q. 予算が限られている場合、どう優先順位をつければよいですか?

A. 本田さんは「予算の上限が決まっている中で、あらゆる要素をチューニングしてベストバランスを探るのが家づくりだ」と語っています。性能を確保するために面積を少し抑えるといった調整も選択肢の一つです。どこかに集中投資するより、音楽のミキシングのように全体のバランスを整えることを意識してほしい——これがつくり手たちの共通したメッセージです。


「高気密高断熱か、木の心地よさか」という問いは、家づくりの優先順位を整理するきっかけとしては有効です。ただ、突き詰めると答えは「どちらも欠かせない」という地点に辿り着きます。性能・デザイン・心地よさの三位一体を限られた予算の中でどう実現するか——それがつくり手の真剣な仕事であり、注文住宅の醍醐味でもあります。

より詳しく知りたい方はぜひ動画をご覧ください。つくり手たちの議論のライブ感と、それぞれの家づくりへの哲学が、言葉の端々から伝わってきます。

この講義の出演者

竹内 正浩(でんホーム 株式会社 福岡県福岡市)

福岡で自然素材の注文住宅を手がけるでんホームの取締役。家づくり百貨 加盟工務店。

公式ホームページ

清水 一人(有限会社 ダイシンビルド 大阪府大阪市北区)

木造新築住宅を手がける。家づくり百貨 加盟工務店。

公式ホームページ

北川 貴久(アティックワークス株式会社/北川貴久建築設計 大阪府東大阪市)

木造新築住宅を手がける。家づくり百貨 加盟工務店。

公式ホームページ

大澤 正美(富士ソーラーハウス株式会社)

木造住宅新築/戸建てリノベーション/マンションリノベーションを手がける。家づくり百貨 加盟工務店。

公式ホームページ

この講義を動画で見る(YouTube)

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