こんばんは。
あすなろ建築工房の関尾です。
まずはウッドショック改め
建材ショックの話から。
一番のニュースは
「合板が手に入りません」って話です。
今週の月曜日、材木屋さんや
プレカット業者さんから
「どうにもこうにも
合板が手に入りません」
との電話がありました。
値上げの報道は先週もしましたが、
合板の材料である原木の取り合いが
続いていて、合板の供給が
追い付いていないようです。
これは関東圏での話のようで、
静岡以西はまだ影響は少ないようです。
プレカット工場では、
「現在発注済み物件の合板は
なんとか確保できているけど、
この後に発注されてくる
物件については、
合板の手配の目途がたたない」
とのことでした。
それを証明するかのように、
10月7日の木材新聞に
記事がありました。
https://asunaro-studio.jp/l/m/NVQX902OHbK0Eb
「国産材各種メーカーによる
争奪戦の様相になっている」
との記事。
まだまだ原木の取り合いが
収まっていないようです。
少し前までは梁と柱の材が
まったく足りないということで、
こちらの材に原木供給を
回していたようなのですが、
今度は合板用原木が足りなくなって、
現場は大慌てという感じです。
原木輸出とバイオマスは
相変わらずで、
国内の建材用途原木での
混乱が続いています。
期待はしていませんが、
林野庁や国土交通省など
国主導で、交通整理は
出来ないものなのかと
思ってしまいます。
9月6日の日経新聞には、
「セメントの値上げ」
の記事もありました。
https://asunaro-studio.jp/l/m/CEm4Ty6SpuxYFV
コンクリートの原材料である
セメントの価格が上がれば、
当然生コンクリートの
価格も上がります。
鉄筋も上がっていますので、
当然基礎の工事費も
上がってきます。
外構の駐車場土間の単価も
上がってきてしまいます。
10月7日の日経新聞に
「住宅用の米松製材品、
最高値を更新」
の記事がありました。
https://asunaro-studio.jp/l/m/RUICRrxRTbTkFL
梁材に使われる米松KD材が
また値上がりです。
中国木材の社長は記事の中で
「よほどのことがない限り、
これ以上値上げしないように努める」
と言ってはいますが、
これまで十分すぎるほど
値上げされていますので、
もうこれで最後にして
欲しいものです。
いろいろな建材が
高騰してしまっていて、
請負金額以上で
購入しなければならない
材料も出てきてしまっています。
納期が今まで2週間程度だった
樹脂サッシは、9月の時点で
急に2か月の納期になったと
騒いでいたのも束の間、
現在は2カ月半の納期に
なっています。
本当に現場の監督は
苦労が続きます。
全国の設計事務所さんや
工務店さんと情報交換を
していますが、「着工できない」
「完成できない」「契約できない」
という悲痛な叫びのような声も
聞こえてきています。
8月に入ったくらいから
一部落ち着いた感じが
見えていたので、少し前までは
「ウッドショックで300万円くらい
工事費が上がってしまった」
とお伝えしていましたが、
9月末ごろからの
ウッド(木材)だけではない
「建材ショック」で、
さらに工事費が
上がってきてしまっています。
前回のメルマガでも
お伝えしていますが、
建材や住宅設備器具が
いろいろと値上げされて
しまっています。
ウッドショック改め
建材ショックという形で
第二波が来ているように感じます。
現時点での合計で考えてみると、
構造材で250万円、
外壁と屋根のガルバリウム鋼板で
50万円、石膏ボードや
そのほかの建材で100万円、
設備器具で50万円と
合計で450万円くらいは
上がってきているような感じです。
先にお話したように
まだピークはこの後に
あるように思います。
秋から年末にかけてピークがあって、
価格が落ち着いてくるのは
春以降になるようにも
感じてきています。
一時期は
「夏にピークで秋には落ち着く」
と読んでいたのですが、
木材だけで終わらずに
他の建材に高騰が広がっていて、
大きくずれ込んでしまいました。
予測が外れてしまって
申し訳ございません。
極力コストアップを
抑えられるように、
アンテナを張り続け
安値仕入れに努めるほか、
省力化などでコストを
削減できるよう社内努力も
続けて参ります。
しかし、この建材の価格高騰は
どうにも予測が立たない
状況となっています。
ウッドショック前と比較すると
家一軒で考えてみると、
500万円程度のコスト増を
見て頂きたいと感じるように
なってきました。
3000万円の家づくりの場合には、
15%の価格アップとなります。
先ほど、朝日新聞の
記者さんからも取材の電話があり、
上記の内容を伝えました。
もしかしたら近々紙面に
載るかもしれません。
これからも建材の値上がりは
十分に予測され、
今後値下がりすることは
期待できませんので、
これから家づくりを
ご検討されている方は、
十分な余裕をもって
おいていただければと思います。
ウッドショック、
建材ショック関係は
重い話になってしまいました。
ということで
本題に入りたいと思います。
先日、ネットニュースを見ていて、
気になる記事がありました。
「市川市庁舎のルーバー大量損傷、
乾燥収縮などが原因か」
というものです。
https://asunaro-studio.jp/l/m/2er6mPwPKdJZY5
以前にも市川市庁舎の
ルーバーの破損は報道はされていて、
原因調査がされていました。
https://asunaro-studio.jp/l/m/i2GqqFOx9QrZDh
今回その調査結果の
発表記事のようです。
以前の不具合報道の際に
「きっと熱伸びだろうな~」
と思っていたのですが、
やはり原因は熱伸びと
乾燥収縮のようです。
このルーバーはPCa版と
呼ばれるコンクリートの板で
出来ています。
PCaは
「プレキャスト鉄筋コンクリート」
の略で、皆さまもご存じの
鉄筋コンクリートを
『プレキャスト』すなわち
「あらかじめ(プレ)成形する(キャスト)」
されたもののことを言います。
鉄筋コンクリートは、
現場で組んだ鉄筋に
コンクリートを流し込んで
成型されることが一般的ですが、
この成型過程を工場で
行ったものがPCa版で、
このPCa版を現場に運んで
組み立てる工法が
「プレキャスト工法(PC工法)」
と呼ばれています。
木造住宅ではあまり馴染みのない
PC工法ですが、オフィスビルや
商業施設や公共施設などの
鉄骨造の大型建築物では
一般的な工法となります。
前職場時代には、
よくPCa版の工場に
検査に行ったものです。
工場で成型されたPCaで
造られた床板や外壁パネルを
現場で組みあげられた鉄骨の柱や
梁に接合して大型建築物が
出来上がっていきます。
PC工法自体は歴史もあって、
研究が進んだ工法なので、
まったく問題はないのですが、
このPCa版を用いた庇や
ルーバーなどは
よく不具合も起こります。
その一番の原因が、
先にお話した「熱伸び」です。
おそらくですが、
今回の市川市庁舎の不具合も
この「熱伸び」が原因と思われます。
記事の表題には
「乾燥収縮などが」とありますが、
不具合の写真を見る感じでは
「熱伸び」が原因だと思います。
この不具合は、市庁舎という
大きな建造物での話ですが、
実は住宅レベルでも「熱伸び」
による不具合と言うものは
起こっています。
ということで、本日は
「家が動く? 熱膨張の話」
をしたいと思います。
私が、15年前に
修業させてもらった工務店では、
設計事務所さんから依頼されて
施工する物件が多く、
少々「奇を衒(てら)った」
ディテールのお家が多くありました。
庇やトップライトに、
鉄やアルミやガラスなどを
使うことが多く、
竣工後に雨漏りしている家が
少なくはありませんでした。
https://asunaro-studio.jp/l/m/A74he6i4pWgeUW
竣工後1年~3年程度は
よいのですが、数年経ってから
恒常的な雨漏りに
悩まれているお施主様が
多くいらっしゃいました。
修業させてもらった工務店が
廃業する際に、この雨漏りを
すべて直させてもらいました。
そんな経験から、
雨漏りの原因と対処法は
身についています。
この雨漏りの原因の一番が
「熱伸びをしっかり
考えていないディテール」でした。
庇やトップライトは、
真昼は真上から太陽に熱せられ、
夜は夜露で冷やされる部分となり、
一日の間に温度差が
とても大きくなる部分です。
真夏は屋根面の温度は
80℃以上になることもあります。
そして、夜は20℃前後まで
下がります。
その温度差は60℃になります。
庇やトップライトに、
鉄やアルミやガラスを用いた場合に、
異質な材の間には
「コーキング」を用いて
塞がれることが多いのですが、
このコーキングの幅が
ちゃんと検討されていないことが
多くありました。
コーキングの幅は
大きくても12mmくらいで、
5mmくらいしかない場合も
多くありました。
大抵はアルミや鉄とガラスと
下地部分がコーキングで
処理されているだけとなっていて、
熱膨張率の違いにコーキングが
対応しきれずに、コーキングが
切れてしまっていました。
コーキングが切れていることは
見た目では分からないものなので、
原因不明の雨漏りに
悩まれている感じでした。
アルミの熱膨張率は23です。
鉄は12です。
コンクリートは10位あります。
ガラスは8、木材はほぼ0となります。
熱膨張率は1℃の温度変化で
1ミクロン伸びるという単位です。
先にお話した真夏の昼と夜の
温度変化(60℃)を考えると、
アルミの1mの
フラットバーで考えると
1000×23×60÷1000000=1.4
なので、アルミ部材は
1.4mmも伸びることになります。
先の市庁舎のPCa版も
コンクリートですので、
0.6mm延びます。
おそらくこの市庁舎のルーバーは
3mくらいはあるように見えるので、
合計では1.8mm延びることになります。
このルーバー間に
「逃げ」と呼ばれる隙間を
作っておかなかったので、
「熱伸び」で今回の不具合のように
割れが生じてしまったものと思われます。
住宅のトップライトや庇も同じで、
アルミや鉄で造られた庇は、
数ミリ単位で動くことになります。
下地の木材は熱伸びがほぼ0なので、
3mの庇は5mm前後
動くことになります。
外壁などの隙間を
コーキングで埋めることで
止水している場合には、
5mmも動いてしまうと
このコーキングが追随出来ずに
「コーキングが切れてしまう」
結果となります。
コーキングが切れれば、
台風などの大雨が降ると
切れたコーキングから
雨水が侵入してきます。
ちなみに、コーキングの
目地幅の計算は
こちらが分かりやすいです。
https://asunaro-studio.jp/l/m/a7a9nULdivFgjb
詳しい説明は省略しますが、
仮に先の5mmの動きに
追随させるためには、
シリコン系のコーキングで
25mmを必要とします。
施工誤差を考慮すると
30mmくらいは必要になってきます。
しかもそれは適切に、
「接着シロ」を確保して、
バックアップ材という材を入れて、
接着面をシーラーという
1次接着剤で下処理した
完璧な施工が出来た場合の話です。
もしも1cm程度のコーキング巾しか
確保できていないようだと、
ひと夏でコーキングは切れてしまいます。
どちらかというと、
1cm程度のコーキング幅しか
確保できていないお家の方が
多いように思います。
しかもコーキングは
紫外線で劣化します。
コーキングに止水を期待することは
とっても危険だということに
気が付いていただけるものと思います。
コーキングは、雨水の侵入を
少なくすることは出来るけど、
完璧なものではないので、
二次防水と言う形で、
物理的に雨水を外に
排出する方法が必要になってきます。
この二次防水のディテールを
考えるのがなかなか
大変なものなのです。
家の外部には、木材、
サイディング材、ガルバリウム鋼板、
アルミ、樹脂などいろいろな
熱膨張率の建材が使われています。
これらの動きをしっかりと見据えて、
屋根や外壁と取り付く部材の
ディテールを考えて
設計する必要があります。
いつもと変わった部材などを
壁や屋根に取り付けする際は
要注意です。
屋根に太陽光発電パネルを
載せる場合も
「屋根材とパネルの動きが違う」
ということを認識したうえで、
設置方法を検討する必要があります。
こんな視点で家づくりが
出来ている設計者はあまり多くは
無いと感じてしまっています。
ちなみにですが、
ハウスメーカーはこのあたりについては
しっかりと検討されていますので
安心と言っていいと思います。
家づくりって奥が深いですね。
本日は
「家が動く? 熱膨張の話」でした。
VOICYは、引き続き、
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https://asunaro-studio.jp/l/m/XnxFTA3i5W9hZq
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