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株式会社あすなろ建築工房

高性能な住宅が寒い? 性能と居心地の関係

こんばんは。

あすなろ建築工房の関尾です。

新年明けましておめでとうございます。

今年最初のメルマガです。

年末年始はいかが
お過ごしでしたでしょうか。

昨年は実家での正月を過ごすことが
出来なかった方も、
今年はご実家で過ごすことが出来た方も
多かったのではないかと思います。

私のところは長女が高校受験の年
ということもあって、どこにも出かけず、
家で溜まった仕事をする
年末年始となりました。

今月末に若手工務店の皆様向けに
講師をさせていただく予定があり、
その資料作りに多くの時間を
当てさせていただくことが出来ました。

他には駅伝見たり、
次女の付き合いで「呪術廻戦」
の映画を見に行くくらいの
年末年始でした。(^^;

そうそう、忘れてはいけない
イベントもありました。

国道交通省の
「脱炭素社会の実現に向けた、
建築物の省エネ性能の一層の向上、
CO2貯蔵に寄与する建築物における
木材の利用促進及び
既存建築ストックの長寿命化の
総合的推進に向けて」
のパブリックコメントの
締め切りがちょうど本日でした。
https://asunaro-studio.jp/l/m/V9cz2Kcbnbi9ok

年末年始の宿題として、
このパブリックコメント提出を
予定しており、数日前に
しっかり提出させてもらいました。

このあたりの情報は、
東京大学の前先生のホームページに
最新情報が揃っていますので、
情報を集めたいという方は
是非チェックしてみてください。
https://asunaro-studio.jp/l/m/ahcFIznSk9oV5N

このパブリックコメントでは、
「新築建築物における
省エネ基準への適合」についての
コメントも受け付けていました。

省エネ基準への適合義務化は、
2020年に施工されるはずだったのですが、
業界団体の反対により、
適合義務化は見送られ、
施主への説明を義務化されるだけに
留まってしまいました。

そんなところに昨年4月に
当時の菅総理大臣から
「2030年に向けた
温室効果ガスの削減目標について、
2013年度に比べて
46%削減することを目指す」
と表明されました。

そして「2050年カーボンニュートラル」
つまり2050年までに脱炭素社会を
実現することが宣言されました。

その宣言を受け、2025年には
省エネ基準への適合義務化が確定的になり、
さらにその先にはZEH基準並みの基準値まで
適合義務化が模索されています。

年末年始のテレビCMでも
日本で一番多く住宅を作っている
某会社の建物は
「全棟住宅性能評価書付き」と
歌舞伎役者の方が、宣伝されていました。
https://asunaro-studio.jp/l/m/zhqE0gpGHKMY5Y

そもそもこの性能評価の等級設定も
大手メーカーさんに合わせて
作られており、彼らの作っている住宅が
最高等級になるように
設定されたものとなっています。

現在の最高等級である「等級4」は
平成11年に制定されたもので、
すでに時代遅れの基準です。

この基準を「最高等級」と言い続けたい
大手メーカーさんの都合で、
この基準以上の等級が
定められてこなかった経緯があります。

2020年に義務化が施行される直前に
「中小工務店が対応することが難しいから」と
中小工務店の所為にされてきました。

パブリックコメントでは
「すでに数年前からG2基準を
最低基準として家づくりを行っており、
等級4どころかそれ以上の性能を確保しての
家づくりが当たり前になっているので、
省エネ基準適合義務化に対しては
まったく問題がなく、それ以上の基準が
義務化されたとしても
滞りなく対応が可能」
であることを伝えさせてもらいました。

実際にお客様からも、
高性能な住宅を具体的な数値を用いて
求められるようにもなってきました。

一般の方が住宅の性能に
興味を持っていただくようになったことは
とても良いことだと思います。

この5年位は私も
「性能の大事さ」について、
いろいろな場面で必要性を
説明してきましたので、
その成果も出てきたように感じています。

最近はほとんどの方が
「性能の大事さ」を認識されてから
家づくりを検討されるようになっていて、
家づくりを検討されている皆さんの
意識が大きく変わったと思います。

求める側つまりハウスオーナーとなる方は、
家族の安全と安心を求めるので、
「性能の大事さ」については
かなり詳しくなっているのですが、
国や自治体の意識は
まだまだ旧態依然のままです。

そして作り手側も「性能の大事さ」を
認識しているのはほんの一部だけで、
まだまだ大多数がこちらも
旧態依然となってしまっています。

この2年位で高性能住宅ブームに
なっているようにも思うのですが、
そこで気になることがもあります。

先のパブリックコメントにおいても
この懸念について述べさせてもらいました。

それは、数字上の高性能化と
現場のギャップについてです。

現時点でもそうなのですが、
建築基準法で定められた断熱基準は、
設計上の断熱性能、
つまり書類上の数字であって、
実際の建物の性能ではないということです。

実際に現在の基準である
UA値0.87の設計性能が
すべての建物でしっかりと
性能が発揮されていれば、
「冬に底冷えして、夏に暑くて過ごせない」
というようなことは起こらないものです。

つまり実際に出来上がった住宅の断熱性能は、
UA値0.87の性能が
発揮されていないということです。

その理由は、施工する技術者の知識と
技術が不足しているからに他なりません。

以前に応急仮設住宅の実技演習の際の
話をしたことがあります。

応急仮設住宅の実技演習の際に、
普段は大手のハウスメーカーの
施工をしている大工さんが参加されていて、
断熱材の施工の際に誤った施工方法で
断熱材を施工されていたので注意をすると
「そんな面倒な施工はしていない。
いつもこのやり方だ。
皆も同じだ。」と
逆切れされてしまった話です。

また、あすなろ建築工房の大工さんが
仲間の大工さんの依頼で
大手パワービルダーさんの住宅を
手伝った際の話も
メルマガでお伝えしたことがあります。

あすなろ建築工房も含め、
丁寧な施工を心掛けている住宅会社では、
断熱材の充填と気密シートの施工には、
「2週間」の日数がかかるのですが、
ハウスメーカーは半分の「1週間」、
建売住宅やローコスト住宅を
施工されているパワービルダーさんは
なんと1/4の「3日」の
施工日数だということ。

そして、その大工さんが
手伝いに行った現場の大工さんは、
たった「1日」で終わらせたこともあると、
自慢をしていたという話です。

丁寧な施工を普段から心がけている
大工さんは「チンタラやってんじゃねえ」
と逆に怒られてしまって、
「もうあの会社の仕事は手伝いたくない」
と話をしていました。

現場で断熱材を充填している
大工さんや職人さんの意識や技術が、
高性能化に対して
まだまだ追い付いてはいないのです。

それくらい、実際の施工現場は
断熱材の施工の品質に大きな差が
出てしまっています。

グラスウールの正しい
断熱施工方法はこちら。
https://asunaro-studio.jp/l/m/X0CJ3sks8hoHX6

知人の工務店の藏家(くらや)さんが、
正しい施工方法と悪い施工方法を
解説してくれています。
https://asunaro-studio.jp/l/m/NtXvt6wMSuLB4g

結局のところ、「大工や職人の良心」に
委ねられている部分でもあるのですが、
これも大工さんや職人さんの
働き方の違いによって、
その良心にすがることも難しい部分です。

子育て世代の若い大工や職人は
どうしても「稼ぎたい」という
気持ちが強くなります。

丁寧な仕事をして時間をかけるよりも、
見えない部分は出来るだけ手を抜いて、
早く仕事をしあげて、
次の現場に行って
数多く仕事をこなして、
収入を多く得ようとしてしまいます。

手間をかけなければ性能が
発揮されないことを
分かっていても、
周りがそれを許してくれず、
スピードを重視された
現場作業になってしまっています。

効率化、採算性の観点から
住宅会社がそれを求めてしまっています。

断熱材は均等で隙間なく充填されることで、
その性能が発揮されます。

設計上の数値は隙間なく、
設計上の厚み以上に
充填されていることが前提で
性能を計算されています。

実際の現場は、上下や両端や
筋交い部分などで隙間が生じ、
厚みにもムラが生じています。

そもそも袋入りの断熱材では、
隅までしっかりと断熱材を
充填することが出来ないものです。

そして断熱材がどのように
施工されていればよいのかという
基準がそもそもありません。

欠損部があったり、
断熱材の厚さにムラがあったとしても、
それを評価する基準がありません。

基準がもしあった(出来た)
としても、それをしっかりと
チェックできる人がいない
という現実もあります。

住宅性能評価には、
「設計」と「施工」の2種があって、
「施工」のほうでは現場での
検査がなされるのですが、
それもある意味ザル的な
検査となってしまっています。

検査の基準が甘く、
検査員の技量も足りていない
ところがあるように感じています。

ある意味で、現場の大工さんや
職人さん任せで、断熱材を施工した後に、
表から石膏ボードが貼られてしまうと
もう誰にも分からない世界
となってしまっています。

グラスウールやロックウールなどの
現場で断熱材を切り貼りして
充填する断熱材はどうしても
そのようなことが起こってしまいます。

住宅会社の社長さんも
設計者さんも監督さんも職人さんも
理解していないところが
本当にたくさんあります。

そのような意味から
現場発泡ウレタンなどの断熱材は
「現場のムラが出ない」
という特徴があるので、
ハウスメーカーや大手ビルダーで
採用されている事例が多くあります。

現場発泡ウレタンなどの施工の際は、
専門メーカーが施工するので、
その会社の技術者が
社内で設けた基準に沿って、
チェックしながら施工しているので、
品質は確保されています。

「そうであるならば、住宅は皆、
現場発泡ウレタンにすればいいのに」
と思う方も
いらっしゃるかと思いますが、
現場発泡ウレタンには
致命的なデメリットがあります。

現場発泡ウレタンの致命的な
デメリットについては、
過去のメルマガでも
お伝えしているとおりで、
詳しくはまたの機会に
したいとは思いますが、
長期的な視点で見ると
選択肢から外さなければならない
断熱材と考えています。

話は戻りますが、世の中には
「書類上の数字だけ高性能」で、
「実際の性能が伴っていない」
という住宅が本当に多くあります。

中途半端な高性能化は
内部結露などの不具合の原因にもなります。

現時点の次世代省エネ基準(等級4)
程度の断熱材の厚さであれば、
ある程度のムラがあっても
その差は小さいのですが、
G2基準などの高性能な
断熱性能になると断熱材の厚さも
それなりになるので、
断熱材のムラ、つまり
断熱欠損部分があると、
そこが大きな弱点になって、
内部結露などの事故に直結してきます。

先にご説明した通り、
2023年に省エネ義務化は実用化されます。

法律で断熱性能の最低レベルを
引き上げるものではありますが、
一方で施工品質については
問われてはいません。

簡単に言ってしまうと
書類上だけ性能を
満たしていればよいので、
その通りに性能が発揮されていなくても
法律違反にはならないものです。

事実、周りで建設している
お家の様子を見てみても、
充填された断熱材の能力を
100%発揮できている家は
ほとんどありません。

不良な住宅を増やさないためには、
義務化と同時に、
現場検査が必要になり、
そのためには検査技術者の
育成も必要になると思います。

現場で丁寧な施工がなされ、
設計上の数値がしっかりと
確保された住宅は本当に
居心地のよいものです。

モデルハウス兼自宅の
「六ッ川の家」はUA値0.49なので、
G2基準に満たない性能ではありますが、
丁寧な施工がなされているので、
この年末年始も暖かく過ごしています。

この年末年始は
太平洋高気圧下にあったので、
晴天続きで日中に日射を
大量に得ることが出来たので、
太陽から得られる熱量で家は暖かです。

日中の室内の温度は25℃を超え、
窓を少し開けてしまうほどです。

そして日中に蓄熱された熱で、
夜も暖かで外気温が
5℃くらいまでなら、
無暖房で過ごせます。

朝方の冷え込みの際に、
2時間ほど床下エアコンを
稼働させることで家全体の室温を
19℃以上をキープ出来ます。

つまり丁寧な施工をした
G2基準を満たした家の
居心地は相当よくなります。

さらに日射取得と日射制御が
しっかりとなされるならば、
夏も冬も快適に過ごすことが出来ます。

そのためには設計と現場の
両方の知識と技術を
向上させる必要があります。

全国的な高性能化を
当たり前にしていくには、
業界全体の意識を
変えていく必要があります。

このことは、所属している
JBN全国工務店協会や
神奈川県木造住宅協会や
新木造住宅技術研究協議会(新住協)
などを通して、地域の設計事務所や
工務店や職人さんや大工さんに
周知していきたいと思います。

今年最初のメルマガは
少し堅い話になってしまいました。(^^;

今年もメルマガでは家づくりに
お役立ちの情報をいろいろと
お伝えしていきたいと思います。

VOICYも
週に3回の配信を続けています。
https://asunaro-studio.jp/l/m/iHmtslEjhIAQqN

メルマガと連動した話題も
多く配信していますので、
こちらも是非お聞きいただければ幸いです。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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