家百マガジン

こんばんは。 あすなろ建築工房の関尾です。 新規のお問合せを頂いたお客様で、大手のハウスメーカーさんと検討されている方も時折いらっしゃいます。そんなこともあって、相手を知っておく必要もありますので、ハウスメーカーさんについての研究もしています。ということで、本日は「ハウスメーカーと工務店 どちらが安心？」のお話をしたいと思います。 ちょっと前に、エニワンという会社さんが「一戸建て住宅建築会社の選び方に関するアンケート」という調査を行っていました。https://asunaro-studio.jp/l/m/U2clrAQBJG7eYn 「一戸建て住宅建築会社を決めるまでに、何社比較しましたか？」との質問に、6割近くの方が『2～5社』と回答しています。いろいろと比較検討して住宅会社を決めていることが分かります。そして結果としてどこで建てたかというと、６割がハウスメーカーで、４割が工務店で建てています。工務店がもっと多いと思っていました。６割がハウスメーカーなんですね。 そして「情報をどこで得たか」の問いには、『紹介（51.5%）』『チラシ（23.4%）』『まとめ情報サイト（11.1%）』とありました。「紹介」っていったい誰からの紹介なのかはとっても気になります。２０１９年の調査なので、コロナ禍を経た現在はこの内容は変わってきていると思います。現在はかなり、SNSやyoutubeなどのネット情報での入手が多いと思います。 工務店を選んだ理由が『親身で融通がききそうだった（55.0%）』『設計の自由度が高い（28.3%）』『比較的価格が安かった（26.4%）』『地元の気候や風土を理解している（23.0%）』『職人気質で仕事が丁寧（22.0%）』とのこと。自分たちの希望を聞き入れてくれて、自由度が高い点などが評価されているようです。『地元の気候や風土を理解している』というところはとても大事ですね。 一方、ハウスメーカーを選んだ理由を見てみると、『会社としての安心感が高い（32.4%）』『親身で融通がききそうだった（32.3%）』『ノウハウが豊富（29.0%）』『設計の自由度が高い（25.6%）』『インターネットで情報を得やすい（22.8%）』とのこと。安心感を第一にされていることが分かります。「情報を得やすい」ということが評価されているということは、逆に工務店など小さな住宅会社は、情報が少ないこともご不安になられている要因であることが分かります。 逆に選ばなかった理由もアンケート結果があり、ここが結構考えさせられる内容です。工務店を選ばなかった理由は『価格設定がわかりにくい（23.9%）』『情報がわかりにくい（21.6%）』『アフターフォローをしてくれるか心配（16.8%）』『施工技術レベルに不安がある（13.3%）』とのこと。耳が痛い話です。「そんなことないよ！」って声を大にして言いたいのですが、こんなイメージなんですね。先ほどハウスメーカーの選んだ理由の逆『情報がわかりにくい』が挙げられています。「情報」を出すことの大事さを再認識させられます。 一方ハウスメーカーを選ばなかった理由は『比較的価格が高い（34.7%）』『強引な営業が苦手（20.0%）』『自由度が低い（16.3%）』『アフターフォローをしてくれるか心配（9.4%）』というものです。これもとても頷けます。 「工務店」を選ぶ人は『こだわり派』、「ハウスメーカー」を選ぶ人は『安心派』って感じなんでしょうか。 他のアンケートを見てみると、ハウスメーカーを選んだ理由の上位が『営業単担当が親身でよかった』『間取り・デザインの満足度が高かった』『耐震性・耐久性がよかった』『大手なので安心』『アフターサポート保証がある』などが上がっていることが多いようです。 『営業単担当が親身でよかった』については、別のメルマガでもお伝えしているとおり、「それが仕事なので」とても親身になってくれます。逆に言えば「成約するまでが仕事」なので、制約してしまうと急に親身感が薄れてしまいます。「契約したら、営業マンの対応が変わってしまった」というのもよく聞く話です。 『アフターサポート保証がある』については、これも別のメルマガでお伝えしているとおり、そこには罠がありますのでお気をつけください。この罠については後半で少しお話したいと思います。 最後の『大手なので安心』についてですが、ここを勘違いされている方も多いので、少し深堀してお話したいと思います。「ハウスメーカーだから、大手なのでつぶれないので安心」と思われている方も多いと思います。本当にそうでしょうか。過去には、多くのハウスメーカーがあったのですが、実は多くのハウスメーカーが撤退したり、つぶれたりしてきています。 過去には、東芝や日立をはじめとして、多くの家電メーカーが住宅をつくっていました。現在では松下電器、つまり今のパナソニックホームズだけが残っている感じです。残っている会社の方が少ないのです。 また過去には意外な会社も住宅を作っていました。カネボウ、ヤクルト、岩谷産業、日本鋼管、東レ、なども住宅をつくっていました。他にもたくさんあったと思います。（私が知らないだけ(^^;） 実は戦後の高度経済成長の時代に急激な都市化に伴い、日本の住宅が足りない時代が長くありました。そこで国主導で「家をたくさん作ってくれ」と号令がかかり、多くの産業から住宅産業に参入が促されました。今から思うと先のように「えっ、そんな会社が家を作っていたの？！」と驚いてしまうような企業が住宅産業に参入していました。 が、しかし、多くの企業が参入したこともあり、激しい競争の中で徐々に撤退していきました。その理由は「採算が合わない」と判断したからです。高度経済成長の時代で都市部で住宅がまったく足りなかった時代は「作れば売れる」のでよかったのですが、だんだんと競争が激しくなると「選ばれないと売れない」となってきました。多くのハウスメーカーが乱立したこともあり、結果として過当競争になり「採算が合わない」と判断すると早々に撤退していきました。このような過去がありますので、今あるハウスメーカーも今後の社会状況次第で、撤退していく可能性はかなり大きいものと思います。 この先ですが、残念ながら住宅産業という産業は、「高齢化社会」「人口減」「ストック住宅飽和」の状態となりますので、市場規模が衰退していく産業です。少子化も進み、人口はどんどん先細りしていきます。２０１８年の数字ですが、居住世帯のある住宅（人が住んでいる住宅）は、5366万戸で、総住宅数に占める割合は、86.0％です。つまり残りの14％が空き家となるので、800万戸が住む人が居ない状態となっています。それから４年も経っていますのでさらに空き家は増え続けてしまっています。高度経済成長の住宅が不足している時代と違い、既存のストックが十分にある状態で、新しく住宅を建てる世代が少なくなっていきますので、ハウスメーカーが「採算が合わない」と判断し撤退する日も近いと見られています。 健全な経営状態であっても「この先が見込めない」と判断する哉いなや撤退します。このような会社にとっては、過去に建ててきた顧客のお家のメンテナンスなどについては、優先順位はかなり後の方になり、公開株の株式会社ですから、株主が第一優先となります。人口減少で先細りで、将来性が見込めない状態で、不採算事業を続けてしまって、株主に損害を与えることは出来ませんので、その不採算事業になる部分は早々に撤退の判断をしてきます。 では、地域工務店はどうなのか？地域工務店は、「地域」を大事にし、採算第一優先ではありません。「家守り工務店」として、地域に根差し、存在し続けることを第一に考えているものです。もちろん営利事業でありますから、赤字を続けて経営することはありませんが、大手のように「儲かる」「儲からない」という理由で会社運営をしていないというところが大きく違います。 もちろんバブル時代にいろいろと手を出してしまって、借金を抱えて自転車操業を続けている工務店や地域ビルダーも多いと思います。資金繰りが厳しい会社さんも実際にはありますので、「いつつぶれてもおかしくない」と思われる方も多いのですが、経営状況は会社によってまちまちとなります。地道に家づくりに特化している住宅会社は、健全な経営をしているところも多いものです。もしご不安であるなら、費用は掛かりますが帝国データバンクなどから財務状況などを調べてみることもよいと思います。ちなみにですが、気になる人も居らっしゃるかと思うので、「あすなろ建築工房」の話をしておくと、お陰様で無借金経営を続けておりますので、資金繰りで苦労するようなことはなく、そう簡単にはつぶれないです。(^^) そしてハウスメーカーが撤退っしてしまった場合に困るのが、ハウスメーカーさんの工法です。大手ハウスメーカーさんは在来軸組み工法などのオープン工法と呼ばれる工法ではなく、型式認定というクローズドな工法を採用しているところが多いです。過去にも大手のハウスメーカーが撤退してしまって、その後に残された住まい手が困ってしまっている場を目にしてきました。クローズドな工法なので、施工したメーカー以外にリフォーム工事が出来ないものとなります。構造の変更が出来ないので、間取りの変更が出来なくなります。少しでも構造の変更を行ってしまうと、「既存不適格」という扱いになってしまいます。長く世代を超えて住み継がれるためには、オープン工法と呼ばれる工法で、設計図がしっかりと残されて、施工した住宅会社がメンテナンスを行っていく必要があります。「建てた後のことは知らない」では後で本当に困ります。 そして、後には「長期保証」という名の罠も待っています。これはメルマガでも過去にお伝えしてきました。「長期保証」に加入するためには、定期的な点検と点検後に指定された工事を行うことが保証更新の条件となります。この「指定された工事」というのがクセモノです。長期保証という名のサブスクの罠にはまってしまいます。詳しく話すと長くなるので、また別のメルマガでお伝えしたいと思います。「大手だから保証も長くて安心」ということではないことを知っておいて欲しいと思います。 以上のように「ハウスメーカーだから安心」ということではない、ということを知っておいていただければと思います。 本日は「ハウスメーカーと工務店 どちらが安心？」のお話でした。

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