「なんで、こんなに良い物件が見つからないんだろう?」
「売却の相談をしたのに、全然話が進まない…」
そんなモヤモヤを感じたことがある方へ。実はそれ、業界の“裏側”に理由があるかもしれません。
私たちが普段アクセスしている不動産情報の多くは、実はごく一部に過ぎません。
その背後には、不動産会社が自社の利益を優先するために物件情報を囲い込むという、業界の根深い問題が存在しています。
この記事では、不動産会社の実態や取引の裏側を長年にわたり取材・研究してきた筆者が、
その仕組みとリスク、そしてあなた自身が損をしないためにできる具体策を、徹底的にわかりやすく解説しています。
✔ 両手仲介と片手仲介の違い
✔ 情報の囲い込みが起きる理由と仕組み
✔ 囲い込みを防ぐためのチェックポイントと賢い対策
――これらを知ることで、本当に信頼できる業者を見抜き、あなたに最適な不動産取引を実現することが可能になります。
知らなかったでは済まされない、人生最大の買い物。
この記事を読むことで、「不安」や「損」を「安心」と「納得」に変える力がきっと手に入ります。
- 囲い込みとは、不動産会社が情報を独占し、両手仲介での利益を優先する行為である。
- 囲い込みは、売主・買主の両方にとって大きな損失をもたらし、市場の健全な競争や適正価格形成を妨げる。
- 信頼できる業者を選び、片手仲介の理解と活用、情報公開の確認を通じて囲い込みのリスクを回避できる。
- 複数業者への依頼や、レインズ登録の確認、囲い込みの兆候を見抜くことで、自衛することが可能。
- 不動産取引では、「知識」と「判断力」が武器になり、自ら情報を見極めることで納得のいく選択ができるようになる。
1. 不動産業界における「情報の囲い込み」とは

1-1. 囲い込みの定義と仕組み
「囲い込み」とは、不動産会社が売主から預かった物件情報を他の業者やポータルサイトに公開せず、自社内のみで取引を成立させようとする行為を指します。
本来、不動産取引は情報を広く公開することで、売主にとってより高く・より早く売却できる可能性が高まります。しかし囲い込みが行われると、情報が制限されるため、買主候補の幅が狭まるという不利益が生じます。
囲い込みの目的の多くは、「両手仲介」による仲介手数料の最大化です。自社で売主と買主の両方を担当することで、業者は手数料を倍得られる仕組みになっており、これが動機となっています。
具体的な手法としては、レインズ(不動産業者専用の情報共有システム)に情報を登録しない、または登録しても「商談中」などの情報を掲載し、他社からの問い合わせを断るケースが多く見られます。
一見すると合法的な運用に見える囲い込みですが、市場の公正性が損なわれ、消費者にとって重大な不利益をもたらすリスクをはらんでいます。業界全体における大きな課題のひとつと言えるでしょう。
1-2. なぜ情報が囲い込まれるのか
囲い込みが行われる最大の理由は「両手仲介」で利益を倍増させたいという業者側の思惑にあります。両手仲介では売主と買主の双方から仲介手数料を受け取れるため、業者にとっては非常に魅力的な取引形態です。
また、囲い込みをすることで他社との競争を排除し、自社の顧客を優先的に紹介できるという利点もあります。社内で完結する取引はスピーディーに進めやすいとされ、成約率も高くなるという認識が一部にはあります。
しかしながら、このような方法は売主の利益を犠牲にして成り立っているケースがほとんどです。物件情報が市場に広く出回らなければ、最も条件の良い買主に届かないため、売却価格が低くなる可能性が高まります。
こうした囲い込みが横行する背景には、営業ノルマや社内インセンティブなど、業界の商習慣が関係しており、業者が短期的な利益を優先する傾向が根強く残っています。
さらに問題なのは、多くの売主が囲い込みの実態を知らないという点です。業者の説明を鵜呑みにし、「まだ問い合わせがない」と誤解したまま取引を進めてしまうケースが後を絶ちません。
1-3. 一般消費者への影響とは
囲い込みが行われることで、消費者は重大な不利益を被る可能性があります。まず買主は、本来市場に出回っているはずの物件情報にアクセスできず、選択肢が大幅に制限されることになります。
その結果、希望条件に合う理想の物件に出会う機会を逃してしまうことがあり、場合によっては後悔を残す住宅購入となってしまいます。
売主にとっても同様に深刻です。囲い込みによって競争入札が起こりにくくなり、販売価格が低下するケースが少なくありません。また、売却までにかかる期間が長引く原因にもなります。
さらに、買主が囲い込み物件を知らずに案内されると、市場価格よりも割高な価格で契約してしまう可能性があります。これは業者による情報操作により、価格比較や相場判断が難しくなるためです。
こうした状況が続くことで、不動産業界全体への不信感が広がっていきます。売主・買主の双方が「仲介業者に裏切られた」と感じれば、その影響は業界全体に波及します。
1-4. 囲い込みの具体例
囲い込みが行われる方法は様々ですが、代表的なのがレインズへの未登録または意図的な情報操作です。レインズは不動産業者間で情報を共有するための公式システムですが、実際には形だけ登録し、他社を排除するような使われ方がされています。
たとえば、ある不動産会社が物件を専任媒介で預かった場合、他社が買主を紹介しようとしても「すでに商談中です」「申込が入っています」と断られることがあります。しかし実際には商談は存在しておらず、自社での両手仲介を狙って時間稼ぎをしているケースもあります。
また、インターネットのポータルサイトに非掲載とすることで、一般消費者の目に触れないようにする手法も囲い込みの一種です。表向きには「広告非掲載の希望がある」などと説明されることもありますが、その実態は不透明です。
さらに悪質な例では、他社からの購入申込があっても「売主が断った」と虚偽の説明をして取り次がないという事案も報告されています。これはもはや囲い込みを超えて、明確な取引妨害とも言える行為です。
このように、囲い込みの手口は複雑化しており、一般の売主・買主が気づかないまま損失を被るリスクが現実に存在しています。
1-5. 法律や業界ルールとの関係
不動産取引には宅地建物取引業法(宅建業法)をはじめとするルールが存在し、公正な情報提供と取引の透明性が求められています。特に専任媒介契約を結んだ場合には、物件情報をレインズに一定期間内に登録する義務があります。
しかし現実には、「レインズに登録していれば義務は果たした」と考える業者も多く、形式的な運用にとどまり、囲い込みを防ぐ実効性に欠けるという課題があります。
具体的には、登録後すぐに「商談中」「申込済」などとステータスを操作し、他社からの問い合わせを意図的に断るケースが横行しています。これは業法の精神を大きく逸脱する行為です。
問題は、こうした囲い込みが現在の法律上、明確な違法行為とまではされていない点です。つまり、倫理的には疑問があっても法的な罰則が適用されにくい「グレーゾーン」にあるのが現状です。
そのため、業界内部からの自浄努力や、より明確なルール化と監視体制の整備が強く求められています。囲い込みを防ぐには、制度的な補完と消費者側の意識改革の両面が必要です。
1-6. 両手仲介と片手仲介の違い
囲い込みの背景を理解するうえで欠かせないのが、「両手仲介」と「片手仲介」の違いです。これは、不動産会社が取引のどの立場を担うかによって分類されるもので、仲介業者の収益構造にも大きな影響を与えます。
両手仲介とは、同じ業者が売主と買主の双方から依頼を受けて仲介する形態です。この場合、売主・買主の両方から仲介手数料を得られるため、業者にとっては非常にメリットの大きい取引になります。
対して片手仲介は、売主または買主のどちらか一方のみを仲介する形態です。他方の仲介は別の不動産会社が担当し、手数料も片方からのみ発生するため、業者にとっては収益が限定されます。
この仕組みの中で、囲い込みが起きるのは両手仲介の収益性を追求する業者が、片手仲介の可能性を排除しようとする動きからです。情報を他社に渡さず、自社内で売買を完結させようとするのはそのためです。
ただし、両手仲介=悪と決めつけるのではなく、その過程や姿勢が公正かどうかを見極めることが重要です。透明性のある説明と、適切な情報公開が行われているかを確認することで、囲い込みリスクを回避することができます。
2. 囲い込みがもたらす問題点とリスク

2-1. 売主・買主双方の機会損失
囲い込みによって生じる最も直接的な被害のひとつが、売主・買主双方の「機会損失」です。本来であれば成立していたかもしれない好条件での取引が、囲い込みのせいで失われてしまうのです。
たとえば売主の場合、物件情報が限られた範囲にしか流通しないことで、競争入札の機会がなくなり、売却価格が下がるリスクがあります。さらに、成約までに要する期間が長引く可能性も高まります。
一方で買主側も、囲い込みによって選べる物件の幅が極端に狭められてしまうため、本来購入できたはずの理想の物件に出会えなくなります。これは人生における大きな買い物において、極めて深刻な問題です。
また、囲い込みにより情報が隠されていることで、買主は価格の比較ができず、割高な物件を選ばされてしまうケースも見られます。こうした事態は、不動産取引の健全性を大きく損なう要因です。
このように囲い込みは、売主・買主の双方にとって重大な損失をもたらすにも関わらず、表面上は気づかれにくく、不動産業者の利益の裏で多くの損が発生している構図があるのです。
2-3. 情報格差による消費者の不利益
囲い込みによって生まれるもう一つの深刻な問題が、不動産業者と消費者との間に生まれる「情報格差」です。これは、不動産取引における判断の質と結果に大きな影響を与えます。
不動産会社が囲い込みを行うと、売主には「まだ買い手が現れていない」と説明し、買主には「この物件しかない」と限定的な情報しか提供しません。意図的に情報をコントロールすることで、消費者は不利な選択を強いられるのです。
このような非対称な情報環境では、売主は適正価格を知らずに売却し、買主は本来もっと条件の良い物件があることに気づかず契約してしまう――という事態が容易に発生します。
特に、不動産売買に慣れていない一般の方々にとっては、囲い込みの存在そのものに気づくことが難しいのが実情です。不慣れな立場を逆手に取った営業手法が、今なお残っているという現実があります。
結果として、消費者は「適切な判断材料を与えられないまま、大きな決断を迫られる」という構造的な問題を抱えることになります。これは不動産取引の健全性を大きく揺るがす要因です。
2-4. 公正な競争が阻害される
囲い込みの問題は、単なる個別のトラブルにとどまりません。不動産業界全体における「公正な競争の阻害」という構造的な問題を引き起こします。
通常であれば、複数の業者が物件情報を共有することで、より良い条件での成約を目指して競い合うことが可能になります。これにより、消費者にとってもメリットのある取引が実現しやすくなります。
しかし、囲い込みによって情報が閉ざされると、競争そのものが起こらなくなり、サービス品質や提案力の向上といった「健全な業界発展の要素」が失われてしまいます。
さらに、特定の業者しか物件を扱えない状態が続くことで、中小企業や新規参入業者が正当に勝負できる環境がなくなってしまいます。これは業界全体の多様性や公正性を著しく損なう結果となります。
このように囲い込みは、一部業者の利益のために、業界の健全性と消費者利益の両方を犠牲にする構造的な問題であり、長期的には市場そのものの信頼性を低下させる深刻なリスクを孕んでいます。
2-5. 不透明な取引と信頼の低下
囲い込みによる取引は、表面的には通常の売買と変わらないように見えても、実際には多くの「不透明さ」を内包しています。これが、売主・買主双方の信頼を損なう大きな原因となっています。
たとえば、売主は「なぜ買い手が現れないのか」「本当に内覧の希望がないのか」など、状況を正確に把握できないまま時間が過ぎていきます。この背景に囲い込みがあるとは、気づくことが困難です。
買主においても同様で、「紹介された物件以外の選択肢がないのか」「本当にこれが最良の条件なのか」が判断しづらく、不透明なまま契約に至ってしまうケースが少なくありません。
こうした状態では、取引後に「もっと良い選択肢があったのでは」と後悔を抱える可能性が高く、結果として不動産業者への信頼は大きく損なわれます。これは業界全体への不信にもつながりかねません。
不動産取引は、人生の中でも特に大きな意思決定の一つです。そのプロセスが不透明であること自体が、大きなリスクであり、「信頼できる相手との誠実な取引」こそが何より重要であることを再認識する必要があります。
3. 囲い込みを避けるためにできること

3-1. 信頼できる仲介業者の選び方
囲い込みのリスクを回避するためには、まず何よりも信頼できる不動産仲介業者を選ぶことが重要です。不動産会社の姿勢や情報開示の透明性には、業者ごとに大きな差があります。
見極めの第一歩として有効なのは、物件情報の公開姿勢です。きちんとレインズや不動産ポータルサイトに物件を掲載しているか、他社と連携しながら売却活動をしているかを確認しましょう。
また、営業担当者が「両手仲介」を過度にすすめてこないかも判断材料になります。一方的な説明や、自社だけで取引をまとめようとする発言には注意が必要です。
加えて、口コミやGoogleレビュー、SNSの評判なども参考になります。近年では、誠実で透明性のある対応をしている会社は、ネット上でも高い評価を得ている傾向があります。
最終的には、「この担当者なら任せられる」と思えるかどうかが重要です。丁寧な対応・正直な説明・押し売りをしない姿勢があるかどうかを、初期のやりとりの中で見極めましょう。
3-2. 両手仲介と片手仲介の違いを理解する
囲い込みを避けるためには、まず「両手仲介」と「片手仲介」の違いを理解しておく必要があります。これは不動産会社の立場や利益構造に直結する重要なポイントです。
両手仲介とは、ひとつの業者が売主・買主の双方を担当する仲介形態です。業者は双方から仲介手数料を得られるため、利益は2倍になりますが、利益相反が起きやすいという問題があります。
一方の片手仲介は、売主か買主のいずれか片方のみを担当する形です。情報共有や他社との連携が前提となるため、囲い込みが起きにくいという特徴があります。
大切なのは、両手仲介自体が悪というわけではなく、透明性をもって誠実に運用されているかです。契約前に「どういう形態で進める予定か」を確認し、意図を読み取ることが必要です。
囲い込みを避けたい場合は、「片手仲介を希望したい」とあらかじめ意思表示しておくのも有効な手段です。業者側の姿勢を見るリトマス試験紙として活用できます。
3-3. 情報公開のある物件を探す方法
囲い込みの被害を避けるためには、情報が広く公開されている物件を選ぶという視点が非常に大切です。情報の公開度が高いほど、透明性のある取引が期待できます。
具体的には、複数の不動産ポータルサイト(SUUMO・HOME’S・アットホームなど)に掲載されている物件は、他社からも紹介可能なオープンな情報である可能性が高いです。
また、同じ物件が複数の業者から掲載されている場合は、「一般媒介」または情報が共有されている証拠と捉えることができます。こうした物件は、囲い込みリスクが比較的低いと言えます。
一方、「この物件は当社だけが扱っています」といった限定性を強調する営業トークには注意が必要です。非公開や未公開の裏には、囲い込みの意図が潜んでいる可能性があります。
加えて、物件のレインズ登録状況を業者に確認することも有効です。売主であれば「登録証明書を見せてほしい」、買主であれば「レインズに載っているか確認させてほしい」と具体的に依頼することが重要です。
3-4. 複数業者への依頼のメリットと注意点
囲い込みの対策として有効なのが、複数の不動産業者に同時に依頼する「一般媒介契約」を活用することです。これは特に売主にとって、有利な販売環境を整える手段となります。
複数業者に依頼することで、より多くの購入希望者に物件情報が届きやすくなり、競争原理が働くことで高値での売却が期待できるメリットがあります。情報の囲い込みが起こりにくくなるのもポイントです。
一方で注意したいのは、「専任でないとやりません」と言ってくる業者です。こうした場合、なぜ専任でなければならないのか、その理由を丁寧に確認する必要があります。囲い込み体質の兆候である可能性もあります。
また、一般媒介では業者のモチベーションが低下することもあります。「熱心に販売活動をしてくれるか」を事前に見極めるために、提案内容やレスポンスの速さをチェックすることが大切です。
複数業者に依頼することで情報の偏りを防げる反面、連絡管理や調整の手間も増えます。事前に整理したうえで進めれば、リスクを減らしつつ、高い効果を得ることができます。
3-5. 囲い込みを見抜くチェックポイント
囲い込みを防ぐには、まずその兆候に気づくことが重要です。以下のチェックポイントを活用することで、不自然な取引や情報の偏りにいち早く対応できるようになります。
まず注目したいのは、「ポータルサイトに掲載されていない物件」や「特定の業者のみが扱っている物件」です。こうした物件は、情報を意図的に囲い込んでいる可能性があります。
次に、他社を通じて問い合わせた際に「商談中」「内覧不可」と断られるパターンにも要注意です。複数業者に問い合わせて比較してみると、囲い込みの有無が浮き彫りになることがあります。
また、売主として物件を預けている場合、レインズにきちんと登録されているかを確認することが重要です。登録証明書の提出を求めることで、囲い込みの抑止力にもなります。
さらに、担当者が「なるべくうちでまとめたい」と繰り返すような営業姿勢にも注意が必要です。囲い込みを前提とした提案である可能性があるため、第三者の視点で意見を求めることも有効です。
まとめ
本記事では、不動産業界における囲い込みの問題について、その定義から背景、影響、回避策に至るまで幅広く解説してきました。囲い込みとは、不動産会社が物件情報を他社に公開せず、自社内で取引を完結させようとする行為であり、売主・買主双方にとって重大な機会損失をもたらします。
こうした囲い込みが横行することで、適正価格での取引が難しくなり、情報格差が拡大します。また、公正な競争が阻害され、業界全体の健全性や信頼性も大きく損なわれます。これは単なる個別の問題ではなく、構造的なリスクであると言えるでしょう。
囲い込みの背景には、両手仲介による利益追求や、現行法制度のグレーゾーンが存在しています。レインズへの形式的な登録や、実態の見えにくい情報操作が今なお許容されている状況に、制度的な課題も浮き彫りとなっています。
しかしこの状況下でも、消費者が自らできる対策は多くあります。たとえば、信頼できる業者を選ぶ・片手仲介を希望する・複数ポータルで情報を確認する・レインズ登録を確認するなど、少しの知識と行動が大きな防波堤となります。
また、複数業者への依頼や囲い込みの兆候を見抜く視点を持つことも、自分の資産と人生を守るうえで非常に有効です。不動産取引において主導権を握るのは、業者ではなくあなた自身であるべきなのです。
不動産取引は人生に数回あるかないかの大きな決断です。だからこそ、情報と判断力を味方につけ、自らが納得できる取引を目指す姿勢が、後悔のない選択へと導いてくれます。
続きを読むには会員登録が必要です。