凰建設の森です。
本日は打ち合わせ。
岐阜県の中では
最も暑い地域での家づくり。
日本の暑さランキングでも
上位常連の場所です。
そこに、日本で一番
寒い所から来られた方が
住むのですから、
断熱計画は慎重になります。
完成はまだまだ先ですが、
今から楽しみですね。
さて、これはよく質問を
頂く事になりますが、
C値はどこまでを目指すべき?
プロでもいう事が
それぞれ違うんだけど、、、
という物になります。
絶対値としての理想は
C値0.0cm2/m2
しかし、そこを目指すことが
どの程度重要なのか
コスパがいいのかどうか
というのが論点なのかなと。
色んな人の結論が違うのは
今の日本の住宅業界の
レベルがまちまちなのが
少なからず影響しています。
例えばドイツパッシブハウス。
50Pa時の換気回数0.5回は
C値で言うと0.2cm2/m2に相当。
ドイツはパネル工法が標準的。
日本で言うと一条工務店さん。
一条工務店さんのやり方で、
標準的に0.2という数字を出す。
それがドイツのパッシブハウス。
そんな家が年間2~30万棟
建っている。すごいですね。
一条工務店さんのC値が
0.5~0.7で、年間1万5千棟。
日本で建つ同レベル断熱の家を
全部合わせても年間2万棟程度?
その中でC値0.2程度の建物が
どのくらいあるのか、、、
高気密高断熱住宅の
供給能力という点では
ドイツと日本の技術レベルには
そのくらいの格差があります。
ドイツではC値0.2くらいの
工事ができる技術レベルが
無いとなかなか厳しい。
いつパッシブハウスの
依頼が来てもいいように
しておかないとダメですから。
日本で言うと、長期優良住宅くらい
いつでも作れるようにしておかないと
お客様から選ばれないような感じ。
国全体の技術水準が上がれば
一条工務店さんレベルの断熱で
C値0.2クラスの家を1年に
2~30万棟程度供給することが
可能だとドイツが証明してます。
でも、日本はまだそこまでではない。
一部の先進的な人たちが、
完全気密を目指して切磋琢磨。
そもそも気密に反対の人もいれば、
そこそこで一旦歩みを止めた人もいます。
そんな今の日本の状況で、C値は
どこまでを目指すべきかという
意見が分かれる原因は
「気密施工をする人との距離」
になります。
例えば、社員大工の建築会社。
現場の大工さんと、毎日のように
顔を合わせるし、現場で気密の
納まりについて話も出来るし、
レベルアップした技術は、次の
現場にも生かすことができます。
誰でもそうだとは思うのですが、
一度高いレベルの仕事の習慣を
身に着けたのであれば、それを
維持することはさほど苦ではない。
C値のレベルを上げやすいし、
そのレベルを維持することに、
特別な労力やコストもかからない。
社員大工工務店である弊社は
その点恵まれています。
最近は気密について大工さんに
私が何か言わなくても勝手に
十分なC値の報告が上がってくる。
社員大工さんじゃない建築会社。
やはり、ネックなのは成長すること。
C値を良くしたいと思うと、
試行錯誤が必要です。
大工さんが社員さんの場合は、
比較的余裕があるので、
それに付き合ってくれます。
しかしそうじゃない所は
試行錯誤している間にかかる
材料費や手間、どーすんだよ!
と大工さんに言われます。
外注大工さん同士の
横のつながりもあまりなく
技術の横展開がしにくい。
一旦レベルが上がってしまえば
キープは難しくないのですが
上げる事に対するハードルは
社員大工の会社よりも高い。
もどかしい所ですね。
設計事務所さん。
ここは本当に厳しいです。
毎回同じチームで仕事が
出来るとは限りません。
良いチームにめぐり会えば、
C値0.1や0.2が出たりする。
しかし、分かってない
気密施工者になると、
C値1.0を切るのがやっとだったり。
社員大工の建築会社であれば
0.5が保証値ですみたいな事に
持っていきやすいし言い易い。
外注大工の建築会社や設計事務所で
0.5が保証値です、そのくらい
必要なんです。なんて言うのは
今の日本の平均的な大工さんの
気密技術レベルだと本当にリスキー。
職人さんとの距離が遠いから
なかなか言った事が伝わらなかったりと、
自分で何とか出来るものではない。
だから、どうしてもC値の基準は
緩くせざるを得ません。
ハウスメーカーさんも同じです。
いい意味で頭がおかしいのが、
PHJに加盟している設計事務所さん。
気密施工者との距離も何のその、
とにかくその地域でC値0.2を
切れる建築会社を探しまくる。
無ければ現場で技術指導をしながら
何としてでもパッシブハウス基準の
気密性能を叩き出すんだ。
全員ではありませんが、そんな
設計者さんがちらほらいるのがPHJ。
今の平均的な職人さんのレベルから
出来るC値を考えるという
フォワードキャスティングではなく
必要なレベルから、どうやったら
それが出来るかを考える
バックキャスティングの違いですね。
しかし、そんな設計事務所は全国でも
数えるほどしかいらっしゃいません。
という事で、必要なC値に対する、
コメントの違いというのは
施工レベル差が大きいという事情から
発生してきています。
出来る保証の無いものは
やっぱり言い切れません。
建築会社として発注する可能性のある
職人さんの中で、最も低いレベルの人に
基準を合わせて発言をせざるを得ない。
では、続きましてC値の違いが、
家づくりの違いにどう表れるか。
どちらかというとこっちの方が
重要と言えるかもしれません。
見たことあるよって
言われる方もいると思いますが、
C値と漏気量の関係は
こんな感じになります。
↓ ↓
https://ohtori1.com/l/m/THAPlwv8wncFNj
120m2の家だと換気量は144m3/h程度。
C値0.5でも20m3/h程度の余分な
隙間換気量が増えてしまいます。
実務者さんのブログですと、
こちらなんかも参考になるかと
↓ ↓
https://ohtori1.com/l/m/xLoH29kQh32LcH
私も昔から参考に
させていただいております。
C値と漏気の関係が、
↓ ↓
https://ohtori1.com/l/m/gt5BETzJVxs7sY
こうなるんだったら
確かに上げすぎても
変わらないみたいね。
と言えるんですが、残念ながら
上げれば上げるほど指数関数的に
漏気量が少なくなるのが現実。
漏気量というと良く分からないけど
要するに隙間風なんです。
はい、隙間風が沢山入ってくる。
これがよろしくない。
隙間風が入ってくると、
何が起こるかと言いますと、
いつもいつも言いますが、
「床が冷たい」んです。
裸足で家の中を歩き回る
日本の暮らしにとって、
床の冷たさは快適に直結。
ドイツの話をしたりすると、
ドイツと日本は違うんだと
言われることもありますが、
裸足文化こそ、大きく違う点。
そして、裸足であるからこそ
床の暖かさにはこだわりたい。
弊社も25年前にC値1.0の
家から始まり、C値0.1の家まで
作ってきておりますが、
悲しい事に、人間の体は、
快適に慣れると分かってしまう。
足元の、ほんのわずかな
温度の違いが、気流感が、、
床の温度が低い分を補うため、
エアコンの設定温度を高めるので
どうしても暖房費が上がる。
じゃあ、やっぱりC値1.0では
ダメなのかと。
いえ、やりようはあるんです。
足元が冷えるなら、足元こそ
暖かい家にすればいいじゃない。
ってなるんですね。
だから、C値にそこまで
自信を持てないのであれば、
床下エアコンや床暖房などの
床下熱源による暖房設備を
セットにすれば、足元が
寒い問題は気になりません。
PHJの会員さん等が、
C値0.2にこだわって、
床下熱源を使わないのも
C値1.0以下の会社さんが
床下熱源を採用するのも
どちらも辻褄の合う話。
当然、床下熱源方式の方が
年間の暖房費は大きいですが
十分な断熱があれば、
差は年に1万円も行かない程度。
それであれば、優先順位的に
C値はとりあえず1以下を確保して
別の所の課題を片付けようか。
という事になったりもします。
今はまだまだ住宅性能向上の過渡期。
日本中どこの建築会社でも、
どこの大工さんでもC値0.2程度が
当たり前になって来るまでは、
C値どの辺がちょうどいい?
という議論は終わらないと思います。
そして設計事務所さんが、声高に
C値はもっとこだわるべき。と
言えない事情は工務店側にあります。
私も、他社さんにアドバイスをする
際は、とりあえず1.0は切りましょう
と言っております。
早く全国どこの工務店さんでも、
どんな図面でもC値0.2で
作ってやるから安心しな!
って言ってくれる日が来ると
いいなと思います。
そうすると、本州以南でも
もっと換気空調のレパートリーは
増えて行きます。
本当は完全気密がいい。
だけど、C値1.0以下であれば
リカバリーする技術はある。
という事で、今のお施主様は
ご納得いただけませんでしょうか。
というのが住宅業界側としては
本音の所かなと思います。
今はC値0.1を出す技術が、
一部の人だけのスキルになって
いるので、価格もプレミアム。
しかし、そのうち広まって、
当たり前になって来ると、
気密工事が特別な技術ではなく
どんな家でも標準的にC値0.2
そんな時代がやってきます。
私たちも、順次成長しますので。
今は理想を追い求める姿勢だけでも
評価していただけると幸いです。
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