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人·地域·環境にやさしい住まいで快適に
株式会社 マルト

人·地域·環境にやさしい住まいで快適に

2021年8月31日

―本日ご紹介するのは、滋賀県で工務店を経営されている澤田さん。澤田さんの工務店「マルト」は、製材業を営まれていたお父さまやおじいさまからの意思を受け継ぎ、木への強いこだわりを持った工務店だ。

そんな、地元滋賀県に根ざした家づくりを行っている「マルト」の澤田さんに、国産の自然素材を使うことへのこだわりや、地元工務店ならではの強み、そして家づくりをするにあたり大切にされていることについてお話を伺った。

自分たちにも環境にも優しい国産の自然素材。

―澤田さん一家の経営する工務店「マルト」は、その始まりが、木を育て·切り出し·加工する製材業であったということもあり、国産材を使うことにこだわりを持っている。まずは、そのこだわりについて澤田さんにお伺いした。

澤田さん(以下澤田)僕たちが国産の自然素材を使う理由は、それらでつくられた空間がとても心地よく、安心安全で、生活空間をより快適にしてくれるから。そして最終的には、経済的な面でも環境的な面でも「地域を守る」ということにつながってくると考えているからです。

メンテナンスという面でも、国産材には外材にはない良い点がたくさんあります。例えば、「家のここが悪くなったから直したい」となったときに、外材で建てられた家の場合、取り寄せに時間もかかりますし、取り寄せられない場合もあるんです。なによりも外材は、ガソリンを大量に使って日本に持ってこられたものなわけです。もちろん外材にもいい点はありますが、環境という面では好ましくないかなと僕は考えています。

―現在日本で使われている木材のうち、約7割が外国からの輸入材だと言われている。木材輸送燃料のほとんどがガソリンだ。外材は大量の化石燃料を消費し、二酸化炭素を排出しながら運ばれてくる。すべて欧州からの輸入材で家を建てた場合と、地域材で家を建てた場合、ガソリン約2700リットル分もの消費エネルギーの差があるそうだ。

澤田:それが地元で育った木材、例えば僕たちだと滋賀県で育ったスギやヒノキの場合、すぐそこに、いつでも木材があるんですね。簡単に取り寄せや加工もできます。単純な話、「木材必要?ほなすぐそこにあるよ!」といったイメージなんです。「なんでみんな地元の木を使わへんのかな?」って思うくらいに(笑)。心地よさ·環境·メンテナンスなど、たくさんの面において理にかなっているんです。極論をいうと地元の木は、買って·植えて·買って·植えてを繰り返し行っていけば、永遠に使っていけます。外材と違って、ガソリンを大量に使うこともありません。近くにある素材というものは、それだけ自分たちにとっても使いやすく、環境にも優しい素材なんですよね。

横のつながりの強さ、それが地元工務店の強みでもある。

澤田:現在はウッドショックと言い、外国の木が入らない状態が続いて、それに伴い国内の木材価格も高騰していますよね。大手のハウスメーカーさんや、外材を使っている業者さんは、木が入らなくてとても大変な思いをされています。

国内の木材価格も高騰しているので、「マルトさんも大変なのでは?」と思われるかもしれませんが、実は僕たちはそこまで影響を受けていません。地元の木材を使っているからという理由も挙げられますが、それに加えて、付き合いの長い地元の製材所さんが困ったときは助けてくれる、という信頼関係が築かれているからです。製材所さんが困っているときはウチが真っ先に助ける、ウチが困っているときは助けてもらう。長年のお付き合いで培った強い信頼関係がある。それが地元の工務店ならではの強みでもあります。

―澤田さんいわく、製材所さんとの信頼関係ができているからこそ、技術力が高く高品質な国産材を手に入れられるという面もあるそうだ。外材は安く手に入る(入っていた)というメリットはあるものの、つくり手が分からない。質が高く、つくり手のわかる地元の木材は、住む側の私たちにとっても安心、そして木への愛着がわきそうな気がする。

お客さんが「いい家」と思える家こそが「いい家」。

オーナー様に公開している澤田さんのご自宅

澤田:僕は家づくりをするときに「できる限りお客さんの希望を叶える」ということを大切にしています。もちろんマルトのベースとなっている、地震に強い家をつくること、国産材を使うこと、不要なお金をかけないようにすることなど、絶対に外してはいけないポイントはきっちり守ります。けれどもそれ以外のところは、お客さんの思う通りに家づくりをしていきたいなと考えているんです。

例えば僕たちは通常、外壁に土壁を塗るのですが、お客さんが「それ嫌いやからガルバリウムにして」って言われたら「OKです!」って変えますね。ただ、そのガルバリウムにするとこんなデメリットもありますよ、他にもこんな外壁がありますよ、という部分もしっかりお伝えし、ご納得いただいたうえで取り入れていきます。

―「いい家」とはどんな家なのか、という問いに対する答えからも、澤田さんのこの「お客さまのために」という想いが伝わってきた。

澤田:お客さんたちが、お客さんたち自身の望み通りにつくり、最終的に納得して出来上がった家が「いい家」だと僕は考えています。例えば、佐藤さんという人から見たらいい家でなかったとしても、家を建てた山田さんにとって最高の家であれば、それは「いい家」なのではないでしょうか。希望を叶えるために繰り返しディスカッションをした方の中には、完成後に泣いて喜ばれる方もいらっしゃいますし、本当に思い通りのことができましたと言っていただけることも多いですね。

家を建てているときにも僕から「これぶっちゃけ使いにくいですよ」「多分困りますよ」というような話もさせていただくのですが、「それでも!」ということで望み通りの家を建てられたお客様のもとに、数年後お伺いする機会があります。そうすると「やっぱり澤田さんの言う通り使いにくかったですわ」って言われる場合もありますが、みなさん「それでもやってよかった」っておっしゃるんですよね。そのたびに、僕たちの考え方·やり方でよかったんだなって、いつも思うのです。

―たとえ建てた家が少し使いにくかったとしても、自分たちがこだわり抜いて建てた家であれば、「これも味だな」と感じれそうだ。“自分たちの家“という気持ちもより一層強まるのではないだろうか。

僕たちには、いい意味で「普通の温度感」がある。

澤田:よくお客さまにもお話しすることなのですが、他の工務店さんや設計事務所さんの中には、お客さんの家を「自分の作品」というような表現をされる方もいらっしゃいます。決してそれが悪いということではありません。もちろん「この建築家がつくる “この家(作品)”が好きだ」という方は、ぜひその建築家さんにお願いしてもいいと思います。ですが僕たちマルトは、「家はお客さんがお金を出して建てているのだから、建築家の作品ではなく、お客さんのためのもの」だと考えているのです。

そういう意味では、マルトはいい意味で「普通の工務店」。絶対に自分たちの設計を貫きたい、自分たちの意思は曲げられない、というようなハードル高めの工務店さんや設計事務所さんとは、そこが違うと思っています。いい意味で普通の温度感がある。なので、「家づくりって難しそう」と思われている方こそ、ぜひうちの工務店に来ていただきたいですね。

―最後に澤田さんから、家づくりをこれから行う方へのアドバイスや想いをお聞かせいただいた。

澤田:家づくりにはいろんな形があっていいと僕は思っています。みなさんが納得されて選ばれた工務店であれば、どんな工務店さんでもいいんです。だた一点だけ挙げるとすれば、「どれだけ親身になってもらえるか」というポイントは、工務店選びですごく大切。

耐震性に優れています·断熱性に優れています·体に安心安全な自然素材です、というのももちろん重要です。さらにそのうえで「家族が幸せに暮らしていける家ってどんな家なんだろう」と考えたときに、そこを掘り下げて、寄り添って聞いてくれる工務店、理想の家をつくってくれる工務店に、みなさまには出会っていただきたいと願っています。

(2021/06/08 取材:平井玲奈 写真:家づくり百貨)