会員登録・ログイン パートナー企業申請
ロゴ
株式会社あすなろ建築工房

今後のウッドショック・建材ショック予測

こんばんは。

あすなろ建築工房の関尾です。

年末に昨年のウッドショック・
建材ショックを総括していますが、
新年早々に少し動きがあったので、
情報を共有しておきたいと思います。

まずはアメリカやカナダからの米松、
つまりドライビームの動きからです。

1月10日の木材新聞に
「15種平均が1000ドル台に 
北米製材市況 日本向けは先高観、
試される新価格」とあります。
https://asunaro-studio.jp/l/m/NIeQ3NKssP3bpM

カナダ・アメリカの製材市況が
昨年末に大きく値を上げているとのこと。

11月にカナダで起きた
洪水の影響がまだまだ尾を引いていて、
物流が寸断されたことが
主原因なのですが、それ以上に
カナダ・アメリカでの住宅着工が
高水準になっているとのことです。

ここの価格が上がっているようだと、
「日本に回す余裕はまだまだ無い」
ということになるので、
「米松材が安定してくる」
という期待はまだまだ
出来そうにありません。

そして1月12日に
再度同じような記事がありました。
https://asunaro-studio.jp/l/m/CeRIn7lHRWcPq6

「現地向け価格急騰 米松丸太 
日本向け大幅高の恐れ 
ウッドショック再来か」
との見出し。

内容としては10日の記事と
同じなのですが、アメリカ現地向けの
米松の価格が、昨年末の段階で
日本向け価格を上回ってしまっていて、
今年に入ってからは
日本向け価格よりも
はるかに高い金額にまで
上昇しているとの
詳細な情報です。

「日本向け丸太価格の
今後の動向は予想しがたいが、
大幅な値上がりは確実で、
国内挽き米松製材は2月以降、
想定外の値上げを
迫られる可能性がある」とのこと。

今年に入れば、
米松つまりドライビームも
落ち着いてくるものと
予想していたのですが、
期待を裏切られた感じです。

しばらく国産のスギと
ヒノキで登り梁の設計を
しておく必要がありそうです。

ちなみにですが、
ドライビームという呼び名は、
国内の米松製材大手の
中国木材さんの製品名です。
https://asunaro-studio.jp/l/m/zcgl9PIAd7N0EF

米松は、曲げに強い性質を持つので、
建築物の梁の用途としては
とても優れた性能を持っています。

国産木材を使っている
住宅会社も梁材は、
ドライビームを採用している
会社さんも多くあります。

あすなろ建築工房も
「登り梁」と呼ばれる
屋根を支える斜めの梁材に
使用していました。

これは横浜と言う狭小地で
土地のポテンシャルを有効に使い、
小屋裏となる空間を活用し、
ロフトや吹き抜けを
設けるための工夫です。

和小屋と呼ばれていた
従来の屋根の組み方だと、
屋根を支えるために
小屋梁と小屋束が
ロフトや吹き抜けに
たくさん生じてきてしまいます。

吹き抜けに梁があって、
ロフトに柱がいっぱい立ってしまう
感じになります。

和小屋の工法ではなく、
登り梁を採用することで、
小屋梁や小屋束が無くなり、
ロフトも吹き抜けも
使いやすくすっきりとします。

この違いを説明してくれている
サイトがありました。
https://asunaro-studio.jp/l/m/2dM09lHSgMjTAj

こちらを見て頂くと、
登り梁を採用する理由を
なんとなく分かって
もらえると思います。

小屋裏空間を使いやすくするためには、
2階のスパン(梁間)を
飛ばす(長くする)必要があります。

スパンを飛ばすには、
強度があって、背の高い材が
確保しやすい米松を使用することが
設計上とっても有効となります。

また、この登り梁は
通常の梁の長さよりも
長くなります。

リビングなど大きな空間を
2階に設けた場合、
柱と柱の間の距離(梁の長さ)を
2間(けん)つまり3640mm確保すると、
屋根の勾配が6寸勾配だった場合には、
その上部の梁の長さは
よそ1.2倍、4400mmの長さの材が
必要となってきます。
https://asunaro-studio.jp/l/m/T6NthKHKMKOkX5

一般的に流通している
4mの長さの材では
足りなくなります。

梁間の長さも長くなるので、
強度を確保するためには、
梁の背の高さも
大きくする必要があり、
大きく育った「大径木」と
呼ばれる原木から
切り出してくる必要があります。

そのため、大径木を確保しやすく、
強度の強い「米松」材が
昇り梁には、
適していることになります。

そのため、これまで登り梁には、
米松を採用していたのですが、
ウッドショックでまったく
米松が手に入らなく
なってしまいました。

昨年の夏ごろは、
待っていてもまったく
入手できなかったので、
設計変更を行い、
国産のスギやヒノキで
代用しました。

スギやヒノキは、
米松に比べると
曲げ強度が低くなります。

米松と同じ強度を持たせるとなると、
梁の背を大きくする必要があります。

もともと米松で計算しているときに
梁の背の高さが270mm
必要だったとすると、
スギやヒノキにすると、
300mmや330mmや
それ以上の背が必要となってきます。

この背の高い梁材は、
前述の通り、大径木と呼ばれる
植林後50年以上育った
原木から切り出してくる
必要があります。

この梁背の大きな材は、
多くは流通しておらず、
製材しているのは
関東地方では「二宮木材」、
関西地方では「山長商店」に
限られてきたりしています。

もちろんその他の製材所でも
大径木材は製材しているのですが、
常時ストックがあるのは
上記二社になる感じです。

ちょうど日刊木材新聞に
二宮木材さんの
取材記事がありました。
https://asunaro-studio.jp/l/m/9jV7JrClHAf4OP

昨年の夏は、ほんとうに
大径木の梁が手に入らず
困っていました。

どうにもならなかった頃、
上記記事で取材を
受けていらっしゃる
二宮木材の泰爾専務に
お願いして融通して
もらった経緯があります。

普段からお付き合いが
あったことから、
特別扱いしてもらった形です。

この時に改めて
「材料や流通とのつながりを
普段から大切にしておかないと」
と感じたものです。

ドライビームの状況を
お伝えしようと思ったら、
前置きが長くなってしまいました。(^^;

年初号の日刊木材新聞に
今年の建設材料の展望記事が
あったのでご紹介しておきます。

まず、昨年大きな
話題となった「国産材」。
https://asunaro-studio.jp/l/m/q2xo19ZlIyyplJ

先ほどの話の通り、
北米からの材料輸入が
しばらく滞る様子からすると
国産材の価格は
高止まりのままとなりそうです。

消費者側としては
「早く元に戻るか
値下がりして欲しい」
という気持ちが大きいのですが、
記事は逆の立場での
内容となっています。

それは「木材新聞」という
位置づけもあって
読者は、山主や製材所や
流通関係の方が多いため、
消費者とは逆で
「価格は高止まりして欲しい」
という読者の立場にたっての
記事となっています。

全国的に供給能力引き上げの
意識が高くなっているとのことで、
乾燥器の増設など
設備投資が増えているようで、
国産材は今後増えてくる感じです。

そんな中でやはり
人手不足がどこも
問題になっている様子も伺えます。

次に、先に話題をした
「米加(アメリカ・カナダ)材」。
https://asunaro-studio.jp/l/m/28BeH5t7bftllx

内容的には先ほど
お話した通りです。

価格的な優位性が
無くなって来ているので、
今後は国産材へのシフトが
続きそうな感じです。

次に「欧州(ヨーロッパ)材」。
https://asunaro-studio.jp/l/m/IGutBsc1wuw2QR

欧州材は主に大手ビルダーさんが
使用されている集成材に
使われるラミナ材が
メインとなります。

集成材は大型木造建築物に
使用されるので、
昨年のウッドショック時には
世界的な大型木造建設ブームと
相まって、供給量不足に陥りました。

製材された材料を輸入してくるので、
どうしても海上コンテナを用いて
運ばれてきます。

コロナショックで
コンテナ不足の一番の
あおりを受けたのが
この欧州材でした。

まだコンテナ不足が
元に戻っていない状況なので、
欧州材もしばらくは高止まりの
予測となっています。

次に「南洋(東南アジア)材」と
「NZ(ニュージーランド)・チリ材」
です。
https://asunaro-studio.jp/l/m/GYIlOeCoHCP39o

南洋材は主に
マレーシアやインドネシアからの
材となります。

材種は様々で、ウッドデッキ材や
合板原料だったラワンや
高級床材チークなどがあります。

昨年は新型コロナの影響で
工場停止が続いてしまったため、
供給量が急激に減ったりしました。

環境問題から輸出停止に
なっている材も増えて来ていて、
なかなか安定供給されない感じです。

ウッドデッキ材は、
昨年の秋位から慢性的に
不足していて、高耐久で
人気の高かったイペ材だけでなく、
バツやサイプレスなども
手に入らなくなってきています。

業界的にも、知人工務店さんとの
会話ですは、
「ウッドデッキ材どうする?」
って話が良く出ます。

今後、ウッドデッキ材問題が
話題になりそうな気がします。

「「NZ(ニュージーランド)・チリ材」
ですが、これはラジアータパインが
メインとなります。

ウッドワンと言う
大手建材メーカーが
ラジアータパインで
床材、家具、構造などを
いろいろと製品化しているので
知っている人も多いと思います。

ラジアータパインは、
日本と中国が消費地と
なっているので、中国国内の
今後の需要次第で
日本への供給量も
変わってくる感じです。

次に昨年後半は
話題の中心だった「合板」。
https://asunaro-studio.jp/l/m/oRs971a5TquuJQ

原材料丸太の確保が
いまいちなようで、
しばらく不足が続く模様です。

昨年からメルマガで
お伝えしているバイオマス燃料用に
原木が流れてしまっているのが
一番の原因。

昨年お伝えしているとおり、
接着剤価格が高騰して
しまっているので、
合板価格も高止まり、
またはまだ上昇してしまう感じです。

次に「木質ボード」の話。
https://asunaro-studio.jp/l/m/dfL2yJ3QIKU82v

木質ボードは、
パーティクルボード、MDF、
OSBと呼ばれる木材チップを
加工したボードとなります。

家具の原料や2×4住宅の
構造壁やマンション二重床などに
使われます。

あすなろ建築工房では、
あまり使わないのですが、
ハウスメーカーや大手ビルダーに
多用されている材料となります。

木質ボードは、相変わらずの
コンテナ不足の影響を
大きく受けてしまっています。

製品化の過程で大量の
接着剤を使用するので、
接着剤原料となる尿素不足の
影響を受ける可能性が高く、
価格は今後まだまだ
上がる予想がされています。

続いて「非木質建材」です。
https://asunaro-studio.jp/l/m/zuS6ojve5QerGN

「非木質建材」とは
木材を主原料としない
ボードや断熱材になります。

ボードでは、石膏ボードだけでなく
構造用面材として使われる
ダイライトやモイスなども
含まれます。

昨年末のメルマガでも
お伝えした通り、石膏ボードや
断熱材は、これから春にかけて
値上げがすでに
公表されている材料になります。

断熱材やサッシも含め、
「非木質建材」は
今年も値上がりが
予想されてしまっています。

次に「バイオマス」について。
https://asunaro-studio.jp/l/m/rXSs9PneLroEzx

「これから住宅を建てよう」
という方にとっては、
バイオマスについては
建設時に使用するものでは
ありませんので、あまり関係が
ないかもしれませんが、
以前からお話している通り、
構造部材や合板の供給は
バイオマス燃料の供給と
深く関わっているので、
バイオマス燃料の供給動向
は知っておいても
よいかもしれません。

記事にもあるように、
バイオマス燃料用のチップが
不足しています。

これは以前にメルマガでも
お伝えしているように、
日本全国でのバイオマス発電所の
乱立が原因です。

バイオマス発電は、
製材過程で出てくる樹皮や
枝などの未利用部分や
端材の木屑などを燃やし、
その際に発生する熱を利用して
電気を起こす発電方式です。

木材は燃やすとCO2を排出しますが、
木が成長する過程では、
光合成によって大気中のCO2を
吸収しているので、
「木を燃やす」ということは、
CO2的には、排出と吸収が
プラスマイナスゼロになると
されています。

そのため、バイオマス発電は
CO2の増減に影響を与えない
「カーボンニュートラル」
という位置づけとなり、
火力に代わる新しい発電の方法として、
積極的に建設がなされています。

しかし、その燃料となる
ウッドチップ供給に
まだまだ問題があります。

製材過程で出てくる樹皮や
枝などの未利用部分や
端材の木屑を燃料にするのであれば、
問題ないのですが、
全国にバイオマス発電所が
次々に新設されているので、
燃料となる樹皮や木屑が足りず、
本来であれば製材されて
建設材料となったり、
合板材料になる原木が
バイオマス燃料用材として
供給されてしまっています。

この話をするには、
山から切り出されてくる
原木の種類について、
まずは知っておく
必要がありますね。

原木は、A材(えーざい)、
B材(びーざい)、C材(しーざい)、
D材(でぃーざい)というように
大きく4つの品質に
分けられています。

A材は曲がりなどが無い
まっすぐな材で、建築用材、
家具材など市場性高い
質の高い材となります。

B材は少し曲がりが
あったりする材で、
土木用材などになります。

C材は曲がりが
大きくあるような材で、
集成材、合板用材、
チップ材(製紙用・エネルギー用)
などになります。

D材は伐採・造材の際に
発生する端材で、
チップ材など利用価値が
最も低い質の材となります。

価格もA材>B材>C材>D材の順で
高くなります。

山側の人にしてみると、
数年前までは建設材料用途の
原木として売るほうが
高く売れたのですが、
最近はウッドチップ用の原木として
売ると補助金が付くので、
大変な思いをしてA材用の
「長くて切り出すのが大変な立木」
を切り出すよりも、
太さや長さやひねくれ具合に
問題があってもどんな状態の立木でも
売ることが出来る
ひょろひょろでも短くてもよい
D材を大量に切り出してくる方が
お金になります。

合板不足も続いているので、
合板用原木供給も続けていく
必要があります。

こんな感じで原木の取り合いが
行われてしまっています。

アメリカや中国の住宅需要の増加や
コロナ禍のコンテナ不足で
引き起こされたウッドショックですが、
国内の供給が増えてこないのは、
こんなドタバタ劇が
裏にあるからとなります。

この一番の原因は、国交省、
林野庁、経産省の縦割り行政による
無計画な補助金施策によるものです。

全体供給量と需要を
俯瞰して見ることなく、
各省庁が独自で数字を操作し、
各省庁に関係する産業において
補助金をあてがった結果です。

先に書いたようにウッドショックは
まだ長引きそうです。

国産材の供給量を増やすには、
貴重な木材資源の輸出抑制、
バイオマス発電所の
乱立の制限などを
しなければならないのですが、
ここが是正される様子は
見られません。

バイオマスの説明が
長くなってしまいました。(^^;

最後に「住設(住宅設備)」
となります。
https://asunaro-studio.jp/l/m/gARWMv20FbWxO5

記事にもあるように、
LIXILが4月に値上げを
予定しているので、
他メーカーも今後
追随してくると思われます。

相変わらず、給湯器や
洗浄便座は不足状態が続いています。

住設機器の納期遅れについては、
昨年末の日経新聞でも
記事になっていました。
https://asunaro-studio.jp/l/m/d45LkiFziuSf8o

この不足は記事にもあるように
2月末まで続くものと
予想されています。

記事には樹脂窓の納期が
「1か月前後」とありますが、
現在は「2ヵ月前後」
という感じです。

情報が古いですね。

この住設機器不足は、
業界ではかなり問題に
なっています。

確認申請完了検査には、
給湯器や便器や照明器具が
設置されていないと
「完成した」とは
認められないので、
「完了検査確認済証が
得られず引き渡しが出来ない」
という現場が巷では
続出しています。

そこで、国土交通省住宅局より
「完了検査の円滑な実施に
関する通知の再通知」が、
確認検査を行う都道府県や
指定確認検査機関へ
発出されました。
https://asunaro-studio.jp/l/m/wpHrkbobStgLBQ

これは一昨年の2月、
同じようにコロナショックで
住設が不足した際にも
発出されたのですが、
今回も再通知という形で
発出されました。

とはいっても完了検査が下りたとて、
給湯器や便器が無い状態では
住宅会社は引き渡すことも
出来ませんので、
業界は混乱しています。

ちなみにあすなろ建築工房の
場合ですが、幸か不幸か
工事期間が半年かかるため
必要な住宅設備は
半年前に発注しているので、
一部の器具を除いて
問題にはなっていないです。

ちなみに「一部の器具」とは、
海外製の食洗器です。

ミーレなどの食洗器は
もう半年以上、
国内に入って来ない状況が
続いています。

今年の木材と建材の予測を
書いていたら、それだけで
長くなってしまいました。(^^;

「患者と主治医」の話を
したいと思っていたのですが、
これは次回にしたいと思います。

続きを読むには会員登録が必要です。

無料会員登録で、限定コンテンツ読み放題!