「一生に一度の買い物だから、妥協したくない」
「注文住宅なんだから、私の要望はすべて叶えてほしい」
その気持ち、痛いほどわかります。SNSで見つけた素敵なキッチン、ホテルのような洗面台、開放的な吹き抜け……夢は広がりますよね。
しかし、あえて厳しいことを言わせてください。
「注文住宅は魔法の杖ではない」という事実を直視しない限り、あなたの家づくりは失敗する可能性が高いです。
今日は、何でもかんでも要望を詰め込めばいいと勘違いしている施主が陥りがちな「落とし穴」について、警鐘を鳴らしたいと思います。
目次
はじめに:その「こだわり」、本当に幸せになれますか?
家づくりで最も危険なのは、予算や構造の限界を無視して「あれもこれも」と詰め込むことです。その結果、本当に大切な「住み心地」が犠牲になるケースが後を絶ちません。
落とし穴①:「予算」は無限ではない(標準仕様の壁)
「あれもやりたい、これもやりたい」と言い続けた結果、見積もりを見て愕然とする。これは注文住宅の“あるある”ですが、問題はその後の態度です。
- 「予算内でなんとかするのがプロの仕事でしょ?」
- 「なんでこの素材が使えないの?注文住宅なのに」
こう詰め寄っていませんか?
家づくりには「標準仕様」というベースがあります。そこから外れれば外れるほど、特注扱いとなりコストは跳ね上がります。「何でもできる」は「(お金さえ出せば)何でもできる」という意味です。
プロからの助言
予算オーバーした時、「値引き」を強要するのはやめましょう。見えない部分(断熱材や構造材)の質を落とさざるを得なくなり、結果として「見た目はいいけど住み心地が最悪な家」が出来上がります。
落とし穴②:「物理」と「法律」は変えられない
「ここの柱、邪魔だからなくしてください」「もっと窓を大きく!壁はいりません!」
最近は耐震等級への関心も高まっていますが、それでもデザイン優先で構造を無視しようとする要望は後を絶ちません。
- 構造の限界:柱や壁は、あなたの家族の命を守るために存在しています。無理な大空間は、耐震性を著しく低下させます。
- 法律の壁:「北側斜線制限」や「建ぺい率」など、法律で建物の形はある程度決まってしまいます。
プロからの助言
建築士が「それは難しいです」と言った時、それは意地悪ではありません。物理的・法的に無理、あるいは危険だからです。プロの「No」には耳を傾けてください。
落とし穴③:「メンテナンス」という未来が見えていない
「複雑な形の屋根にしたい」「バルコニーを木製にしたい」「壁紙を輸入物の特殊な素材にしたい」
その瞬間は最高にカッコいいかもしれません。しかし、10年後、20年後のことを想像できていますか?
- 複雑な屋根は雨漏りのリスクを高めます。
- 特殊な建材は、修理の際に部品が手に入らない可能性があります。
- メンテナンス性が悪い家は、将来の修繕費が莫大になります。
何でも詰め込んだ結果、「維持管理できない家」を作ってしまうのは、施主自身の首を絞めることになります。
本当に満足する家づくりとは?
注文住宅の醍醐味は、「何でも足し算できること」ではありません。
「自分たちの暮らしに合わせて、最適な引き算ができること」です。
優秀な建築家や設計士は、あなたの要望をそのまま図面にする「イエスマン」ではありません。あなたの要望の裏にある「本当に叶えたい暮らし」を読み解き、プロの視点で取捨選択してくれるパートナーです。
もし、担当者があなたの無茶な要望に対して「デメリット」もきちんと説明してくれるなら、その担当者は信頼できます。
まとめ:プロを信じて「任せる勇気」を
「注文住宅=わがままを言う場所」ではありません。
「注文住宅=プロと共に最適解を創るプロジェクト」です。
要望を伝えるのは大切です。しかし、それ以上にプロの意見を聞き入れ、予算や構造のバランスの中で「納得のいく妥協点」を見つけることこそが、賢い施主のあり方です。
どうか、詰め込みすぎて破綻する家ではなく、長く愛せる現実的な「いい家」を建ててください。
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